結果を出したGKをすぐに変えるチームはそうはない。次節の第1候補は…。
失点に先立つこと3分前にもコーナーキックからのアラン・ピニェイロのヘディングシュートを好セーブし、カルロス・マルティネスの追撃にも事なきを得ていたが、64分にはさらなる決定機にも立ちはだかる。
ゴールほぼ正面からのマルティネスの直接FKが壁に当たってコースが変わったところに、落ち着いてステップを踏んでリフレクション。このふたつのビッグセーブがなければ、試合は東京Vのものになっていたかもしれない。まさに、勝負の分かれ目だった。
だが本人からすれば、それは大した問題ではないという。
「自分の感覚では別に、あのあたりのプレーは止めなアカンところですから。点を取ってくれていたから良かったですけど、それよりあの1失点をどう防ぐかです。次の試合だって1点で決まる可能性もある」
GKはチームで唯一の直接ゴールを奪われる選手である。失点の感じ方は誰よりも他人事ならぬ“自分事”だ。だから失点を防ぐためにあらゆる策を講じるし、自分をストイックに追い込みもする。何より失点していると勝っても気分が悪い。負けていても自分がゴールして試合も勝てば、終わり良ければにもなるFWとはまるで正反対だ。
センターバックの櫛引一紀とは「最悪失点しても、重ねなければいける」とハーフタイムに確認し、心構えはしていた。それでもいざ失点すると、「重く捉え過ぎて固くなっている自分がいた」。武田はそこに自身で最大の反省点を見出す。それは普段から尊敬してやまない、楢崎がとる試合中の態度、立ち居振る舞いに他ならない。
武田の好セーブによって落ち着き取り戻したチームはそこからさらに2点を追加し、4-1の快勝を得た。ボランチふたりと、センターバック、サイドバックによる得点経過は、名古屋がどれだけ相手を押し込んで試合を展開したかの証左ともいえるもの。それを支えたのは間違いなく、守備を安定させた後方の奮戦だった。その最後尾で仁王立ちした190センチのGKは、「まだまだ、自分の感覚としては全然良くないですね」と顔をしかめる。本当にそう思っているのだ。
結果を出したGKをすぐに変えるチームはそうはない。次節の第1候補は武田で申し分ないだろう。だが、彼はまったく安心していない。「あのやられたところを改善しないと、勝てない」。その危機感は攻撃特化型のチームにとってはむしろありがたい限りだ。ここにきて急浮上してきた武田洋平という実力派のプレーは、次節も名古屋を救ってくれそうである。
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)
ゴールほぼ正面からのマルティネスの直接FKが壁に当たってコースが変わったところに、落ち着いてステップを踏んでリフレクション。このふたつのビッグセーブがなければ、試合は東京Vのものになっていたかもしれない。まさに、勝負の分かれ目だった。
だが本人からすれば、それは大した問題ではないという。
「自分の感覚では別に、あのあたりのプレーは止めなアカンところですから。点を取ってくれていたから良かったですけど、それよりあの1失点をどう防ぐかです。次の試合だって1点で決まる可能性もある」
GKはチームで唯一の直接ゴールを奪われる選手である。失点の感じ方は誰よりも他人事ならぬ“自分事”だ。だから失点を防ぐためにあらゆる策を講じるし、自分をストイックに追い込みもする。何より失点していると勝っても気分が悪い。負けていても自分がゴールして試合も勝てば、終わり良ければにもなるFWとはまるで正反対だ。
センターバックの櫛引一紀とは「最悪失点しても、重ねなければいける」とハーフタイムに確認し、心構えはしていた。それでもいざ失点すると、「重く捉え過ぎて固くなっている自分がいた」。武田はそこに自身で最大の反省点を見出す。それは普段から尊敬してやまない、楢崎がとる試合中の態度、立ち居振る舞いに他ならない。
武田の好セーブによって落ち着き取り戻したチームはそこからさらに2点を追加し、4-1の快勝を得た。ボランチふたりと、センターバック、サイドバックによる得点経過は、名古屋がどれだけ相手を押し込んで試合を展開したかの証左ともいえるもの。それを支えたのは間違いなく、守備を安定させた後方の奮戦だった。その最後尾で仁王立ちした190センチのGKは、「まだまだ、自分の感覚としては全然良くないですね」と顔をしかめる。本当にそう思っているのだ。
結果を出したGKをすぐに変えるチームはそうはない。次節の第1候補は武田で申し分ないだろう。だが、彼はまったく安心していない。「あのやられたところを改善しないと、勝てない」。その危機感は攻撃特化型のチームにとってはむしろありがたい限りだ。ここにきて急浮上してきた武田洋平という実力派のプレーは、次節も名古屋を救ってくれそうである。
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)