レジェンドの軌跡 THE LEGEND STORY――第23回・デル・ピエロ(元イタリア代表)

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サッカーダイジェストWeb編集部

2017年06月01日

運に見放されたアッズーリでのキャリア…だが06年に報われた

頭を丸めて臨んだ06年W杯で悲願の世界制覇。代表では、バッジョ、トッティの存在もあって、主役として大舞台に立つことはなかったが、それでも多大な存在感を示して歴史に名を残した。 (C) Getty Images

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「デル・ピエロ・ゾーン」といわれるペナルティーエリア左45度から、時に強烈に、時にカーブをかけた右足のシュートで、多くの印象的なゴールを決めたデル・ピエロは、06-07シーズンにセリエB、さらに昇格を果たした翌シーズンにはセリエAで得点王に輝いた。

 得点力の高いファンタジスタ系アタッカーは、同時に視野の広さと判断力の高さによりチャンスメイクにも長け、99-00シーズンにはセリエAでリーグ最多アシストを記録している。

 2011-12シーズンまで在籍したユベントスでは、セリエA6回、セリエB1回、コッパ・イタリア1回、チャンピオンズ・リーグ1回、トヨタカップ1回という成績を挙げ、自身は前述のA、Bのリーグ得点王1回の他、数々の受賞歴を誇る。

 そして出場試合数705、得点数290という数字は、いずれもクラブ歴代1位。ユベンティーノの記憶と記録の両方に残る偉大なスーパースター、それがデル・ピエロなのだ。

 そんな彼は、言うまでもなく代表選手としても、伝説を生み出した。各年代の代表チームを経て、95年3月25日のエストニア戦(EURO96予選)から始まったアッズーリでのキャリア。そしてそれもまた、彼の人生らしく、喜びとそれ以上に多くの苦難に彩られるものだった。

 初のメジャーイベントはEURO96。前年11月15日のリトアニア戦で初ゴールを決めたデル・ピエロには、この最初の大会でも得点量産が期待されたが、当時の彼はU-21代表に加え、軍隊代表(兵役期間中)にも名を連ねており、疲労が身体のキレを奪ってしまった。

 グループステージのロシア戦で前半だけ出場したところで、彼にとっての初の大舞台は閉幕。チームは第2戦のチェコ戦で相手をみくびって足元をすくわれ、勝利が必要な最終戦ではドイツにスコアレスドローで乗り切られて無残な早期敗退を喫したのである。

 初めてのワールドカップは98年。フランス大会には、直前のCL決勝(対レアル・マドリー)で負った筋肉系の負傷を引きずった状態での出場を余儀なくされ、力を発揮できず。自身に代わって一躍エースとなったバッジョとの対立論がでっち上げられたことも、デル・ピエロの心をかき乱した。

 準々決勝で開催国に行く手を阻まれたアッズーリ。その2年後のEURO2000でも、フランスにしてやられた。決勝戦、1点リードして迎えたアディショナルタイムに失点し、延長戦でサドンデスの決勝ゴールを奪われるというショッキングな敗北を喫したのである。

 デル・ピエロはこの試合、最後尾まで戻って守備を行なうなどチームのために奮闘したが、一方で決定的な得点機を2度逸してしまい、試合後には国民から戦犯として叩かれる羽目に……。しばらく彼は、自己嫌悪に陥ったという。

 日本と韓国で行なわれた02年W杯では、グループステージ最終戦のメキシコ戦で起死回生の同点ゴールを終了間際に決めて決勝トーナメント進出のヒーローとなったが、それも次の韓国戦での延長戦負けで無意味なものとなった。

 EURO2004はグループステージ3試合に出場するも、ここでもチームは低調のままスウェーデン、デンマークの後塵を拝して敗退。ビッグイベントにおけるアッズーリと自身について「運がない」と言い続けていたデル・ピエロ。しかし、ようやく報われる時がやって来た。

 06年ドイツW杯。国内リーグのスキャンダルによって激震に見舞われながらもチームは結束し、アッズーリは快進撃を披露、決勝戦で因縁のフランスをPK戦で破り、82年スペイン大会以来となる4度目の世界制覇を果たしたのである。

 デル・ピエロのハイライトシーンといえば、地元ドイツとの準決勝だろう。延長戦、ファビオ・グロッソのゴールで勝ち越した後、終了間際に鮮やかなカウンターからダメ押しゴールを決め、狂喜乱舞したシーンだ。そして彼は、決勝のPK戦でも4番目のキッカーとして冷静に成功させた。

 代表でもついに勲章を手にしたデル・ピエロ。EURO2008ではメジャーイベント2大会連続制覇を狙ったが、準々決勝でスペインに敗れ(またもPK戦の末に)、これが彼の最後の大舞台となった。

 代表での最後の試合は、08年9月10日のジョージア戦(10年南アフリカW杯予選)。出場数91は歴代9位、得点数27はバッジョと並んでの4位の成績である。

 クラブに話を戻すと、ユベントス退団後、デル・ピエロは12年から2シーズン、オーストラリアのシドニーFCでプレーし、14年にはインドのデリー・ダイナモスで1年を過ごし、現役生活に別れを告げた。

 引退後は悠々自適な生活を送り、時折、コメンテーターを務めたり、イベントに出席したりする程度で、多くの時間を愛する家族とともに過ごしているデル・ピエロ。果たして今後、現場に戻ってくる可能性は? 多くの人々がその時を待っているのは事実である。


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