【黄金世代】第2回・遠藤保仁「サッカー人生を大きく変えた、1999年の躍動」(♯2)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年05月24日

前にシンジとミツオ。むっちゃ楽しかった。

劣等感を覚えながらはじまったユース代表での日々。最後はナイジェリアの地で輝きを放ち、代えがたい貴重な財産を手にした。写真:ヤナガワゴーッ!

画像を見る

 つねにグループの輪の中にいて、コンスタントに試合出場を重ねていた遠藤だが、アジアユースは予選も本大会もサブメンバーの域を出ない。1998年の年末、ワールドユースを目前に控えて指揮権がフィリップ・トルシエに移っても、その立ち位置は変わらなかった。
 
 だが、状況は一変する。2月のブルキナファソ遠征から帰国してまもなく、稲本がJリーグで怪我を負ってしまう。どうやらナイジェリアでの本大会には万全のコンディションで臨めそうにない。トルシエが3-1-4-2システムのアンカーに迷わず抜擢登用したのが、遠藤だった。
 
 大会後、わたしはトルシエに訊いた。なぜ酒井を右サイドから中央にスライドさせるのでも、中田を3バックからボランチに配置転換するのでもなく、遠藤に託したのか。フランス人指揮官は手短にこう回答した。「イナの代わりはヤットしかいない。常に最高の準備をしていたからな」と。
 
 背番号11は、躍動した。
 
「イナが怪我して、個人的にはラッキーな形ではあったけど、出してもらえたらやれる自信はあった。前(2シャドー)にシンジとミツオだもん。むっちゃ楽しかったよ。フラット3で、チーム自体が超攻撃的だった。パスがどんどん回って、みんなでイメージを共有できてた感じ。
 
 守備は規律がすごく多くて大変なんだけど、それでもみんなで連動して組織的に動けてた。俺らは大会前からそんなに注目されてなかったから、本当に自由に伸び伸びやれたよね。どうしてもシンジにマークが集中するから、そこを逆手に取って、空いたスペースをみんなで上手く活用した」

 
 遠藤のハイライトは、ラウンド・オブ16のポルトガル戦だ。48分、永井雄一郎のパスを受けた遠藤はゴール前20メートルの位置から右足を一閃。相手GKもノーチャンスな弾道で、ゴール右隅に先制点を突き刺した。
 
 大舞台でも気負わず、淡々とタスクを遂行し、周りの個性を活かしながらみずからも活きる──。どの試合でも、普段着のヤットのままだった。
 
「もっとやれるんちゃうかなって、とにかく自信が付いた。余裕ができたというか、より周りが見れるようになったと思う。その後の自分のサッカー人生を考えたらすごく大きな大会だった。どっしり構えられるようになったから」
 
 ただ、決勝で対峙したスペインには0-4と完膚なきまでに叩きのめされた。
 
「決勝はあんまり覚えてないんだけど、まあ、レベルが違った。ブラジルとアルゼンチンが強烈なのはイメージがあったけど、スペインのメンバーをそこまで詳しくは知らんかったし。ただ、大会前からトルシエは言ってたね。『スペインだけは戦ったら絶対に負けるぞ』って。だからどれほどのもんかと思ってやってみたら、マジで強かった。
 
 あれが世界でしょ。ポルトガル、ウルグアイ、メキシコを倒して行けるんちゃうか、来たなこれって思ってたけど、甘くはなかったね」

 
【関連記事】
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「コロコロPKの真実」(♯3)
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「それは、桜島からはじまった」(♯1)
【G大阪】ガンバ最強助っ人はいったい誰? 遠藤保仁の回答が超意外だった
【黄金世代・復刻版】「遠藤家の人びと」~名手ヤットのルーツを辿る(前編)
【黄金世代】第1回・小野伸二「なぜ私たちはこのファンタジスタに魅了されるのか」(♯1)

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ