”戦えない”レッテルを貼られた増嶋竜也が、「今となっては良かった」と語る挫折とは

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2017年05月26日

待っていたのは、厳しい現実。

FC東京では出場機会が限られ、甲府へ期限付き移籍。「武者修行」から帰ってきても状況は変わらず……。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 当時、甲府を率いていた大木武は、片方のサイドに寄せてプレスを仕掛け、パスワークで局面を打開していく戦術を採っていた。
 
 それに合わせてディフェンスラインもスライドを繰り返し、DF全員が潰しにいくことが茶飯事で、チャレンジ&カバーを鉄則とするオーソドックスな守備スタイルとは一線を画していた。
 
「こんなにリスクを冒すの?って驚きましたよ。自分のサッカー理論とまったく違うから、それはいったん脇に置いて、とにかく大木さんのやり方に合わせなきゃ、って必死でした」  
 
 だが、弱点を克服したい増嶋にとって、甲府のスタイルは打ってつけだった。
 
「それまでは身体を投げ出して防ぐとか、1対1で戦うってことがなくて、仲間のカバーをして奪うとか、きれいに奪うイメージしかなかった。でもチャレンジしてみたら、寄せたら意外と取れるんだ、寄せても簡単に抜かれないんだって。新しい自分を発見できて嬉しかった」

 前年までエースだったバレーが移籍したこともあり、甲府はこの年、なかなか勝点を増やせなかった。コンスタントに起用されていた増嶋も、傷めていた左足首の状態が悪化して最後の2試合を欠場。その間にJ2降格が決まった。
 
「残念でしたけど、1年を通して試合に出られて、充実感もあった。チームが降格したのになんですけど、サッカー選手っぽい毎日を過ごせたなって」
 
 初めての期限付き移籍は、「武者修行」と呼ぶに相応しい経験になった。
 
 FC東京に戻って、どれだけやれるだろうか――。期待はおのずと膨らんだ。
 
 ところが、待っていたのは、厳しい現実だった。
 
―――◆―――◆―――
 
「帰ってこい、っていう積極的な話がなかったんですよね……」
 
 声のトーンを落として、増嶋が言葉をつむぐ。
 
 修行先で成長したにもかかわらず、増嶋は新シーズンの構想から漏れていた。
 
 FC東京にも事情があった。増嶋をスカウトした人物はすでにクラブから去っており、2年ぶりに復活した原博実体制も1年で終焉。新体制への移行を控えていたのだ。
 
「チャンスさえもらえないのか、厳しい世界だなって……。目指してきたオリンピックももうないだろうし、選手生命も長くないんだろうなって」
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