才能だけで久保建英は生まれない。元バルサ育成指導者が日本の状況に覚えた違和感とは

カテゴリ:特集

加部 究

2017年05月19日

「日本人はサッカーが下手」と思われていたのは日本人の血ではなく…。

 かつて「日本人はサッカーが下手」と言われてきたブラジルにも、それを否定するサンプルがある。日系2世のアレシャンドレ・カネコは、1960年代後半、ペレが全盛期のサントスで右ウインガーとして活躍した。まだ大半の有力選手が自国でプレーしていた時代で、世界屈指の実力を誇るサントスは、頻繁に世界ツアーに出かけた。
 
「小さい頃から周りの子と比べてテクニックに優れていた」というカネコは、ヒールリフトという技を編み出し一世を風靡する。当時ブラジルでは「狂ったハンカチ」「ランブレッタ」などと呼ばれた。後者はイタリア製の小型バイクで、希少で高価なものの象徴だったそうだ。
 
 そのカネコの訃報が届いたのは、4月中旬のことだった。後年再会した王様ペレに「あの技だけはマネができなかったな」と言われたそうだが、サントスの後輩に当たるネイマールが使い始めるのも伝統なのかもしれない。
 
 カネコは5歳で日本人の父と死別しているので、日本人の血は流れていても、完全にブラジルの文化しか知らなかった。つまりブラジルで「日本人が下手」だと思われていたのは、血ではなく、日常的にサッカーと縁の薄い国で育った環境に要因があったことの証明になる。裏返せば、環境さえ恵まれれば、日本人には独創的なアイデアを具現していく可能性が広がっているのだ。
 
 だが環境は一朝一夕で手に入らない。今では日本の子どもたちも、野球よりサッカーに憧憬を抱く。しかし肝心な大人たちの変革の動きは鈍い。
 
取材・文:加部 究(スポーツライター)
 
※『サッカーダイジェスト』2017年5月25日号(5月11日発売)より抜粋
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