【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|「交代選手と握手」の根底にある学生時代の経験

カテゴリ:連載・コラム

渡邉 晋

2017年05月17日

選手のミスを許せないならピッチには送り出せない。

選手の失敗を許せないのならば、ピッチに送り出すことはできない。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 握手をする際に「すみませんでした」と言う選手もいる。大宮戦のハチ、ルヴァンカップ・柏戦の(佐々木)匠もそうだった。自分に対して不甲斐なさがあるのだろう。つまりそれは「ダメだった部分を理解している」という証。
 
 だから、わざわざその場で何かを言うことはしない。あとで修正する時間を必ず設けて、そのためのトレーニングをする。その繰り返しだ。
 
 大学時代に恩師から言われ、心に刻まれた言葉がある。その人は他大学に進学予定だったのを駒澤大学に引っ張ってくれた。ずっと信頼を寄せてくれ、起用し続けてくれた。
 
 ただ、怪我もあって出場できない時期があった。完治後に再びスタメンに返り咲くのだが、復帰すぐの試合でいつもと違うポジションだと言い渡された。さらに「試合は後半勝負だ」と言われたので、てっきり前半で自分はお役御免なんだと思った。
 
「前半で出番は終わりですか?」と聞きに行った。すると、今までになく怒られた。「スタメンで出るやつが、90分間戦おうと思わないでどうすんだ!」「45分で終わるつもりで出るんじゃない!」と。
 
 結局、その試合はピッチで試合終了の笛を聞いた。監督は途中交代を前提でスタメンを組まない。選手は「90分間戦うんだ」という気持ちを忘れてはいけない。それに気付かせてくれたのが、恩師の言葉だった。
 
 また、ベンチ入りを含めた18人を決められるのは指揮官しかいない。だからこそ、「お前らがやることに対しては俺が責任を取る」という覚悟でいる。どんな失敗をしようが、どんなミスを犯そうが、終わったあとで選手に負の感情を抱くことは一切ない。
 
 もし、その選手の失敗を許せないのならば、ピッチには送り出せない。もちろん後ろ向きな失敗はしてほしくない。大宮戦はそういうミスが多かったから、非常に悔いの残るゲームであったことは確かなのだが……。
 
 起用するのは監督である私だ。不甲斐ないプレーに対して感情を爆発させて、それを交代時などに露わにしたら、選手たちは伸び伸びと戦えないだろう。時間が経ってから冷静に振り返ってもらえればいいし、個別で呼ぶことも、映像を見せることもある。反省はそこからでいい。
 
 もしかしたら、こういう考えはプロとしては甘いのかもしれない。しかし、ベガルタにはそうやって成長させていくべき才能ある選手、若い選手がたくさんいる。だからこそ、「責任を負うから思いっ切りやってこい」という目で見守っている。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は5月20日に行なわれる12節・横浜戦の予定。お楽しみに!

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