【黄金世代・復刻版】「遠藤家の人びと」~名手ヤットのルーツを辿る(後編)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年05月18日

寝ても覚めても、見上げればそこに日章旗。

ヤットが過ごした実家の部屋。いまでも天井には日の丸が貼られている。写真:小倉直樹

画像を見る

 その少し前、父・武義は、大志を抱く保仁の思いを知った松澤に、面白い提案をされている。
 
 兄弟3人、一緒に過ごしていた大部屋は保仁の独占状態となっていたのだが、その天井に、日の丸を貼ろうというものだった。寝ても覚めても、見上げればそこに日章旗。いずれはJリーグ、日本代表、そして世界の舞台へ。「彼にはそれくらいの期待をかけていい」と太鼓判を押してもらった。
 
 父はマジックで白い部分に「めざせ日本代表!! U-20、シドニー五輪、ワールドカップ」と激励のメッセージを書き記し、「お父さんより」と小さく添えた。今では遠藤記念館のごとく彩られているその部屋だが、天井には燦然と、日の丸が輝いている。
 
 まさかそのすべてが叶うとは思ってもいなかったと、父が明かす。
 
「プロになってからもゆっくり着実に成長していきました。フリューゲルスの消滅や京都での降格もあって、シドニーでは試合に出れなかった。それでも気丈に足元を見ていましたよね。ガンバという最高のチームに移籍できたのは、ヤットにとっては大きかったと思います。ドイツ(ワールドカップ)ですか? 残念でした。ひとりだけ出れなかったんですからね。悔しかったけど、楽しみは先に取っておきますよ」

 桜島で育った18年間。兄たちの背を見ながら、心の底からサッカーを愛し、常に楽しくも悩み、考え、独自のスタイルを深めていった。
 
 その探求心は衰えることを知らず、保仁自身、「特徴がないのが俺の特徴。だからどんな選手と組んでも楽しくやれるし、時に合わせたり、時に使ったり使われたり、まだまだ伸びていける気がしてる」と語る。

 いまだ進化を続ける27歳。この天性のプレーメーカーがキャリアのピークを迎えるのは、はたしていつになるのだろうか。

<了>

取材・文:川原崇(サッカーダイジェスト)

【PHOTO】厳選フォトで振り返る1999ワールドユース「銀色の進撃」
【関連記事】
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「それは、桜島からはじまった」(♯1)
【黄金世代・復刻版】「遠藤家の人びと」~名手ヤットのルーツを辿る(中編)
【黄金世代】第1回・小野伸二「なぜ私たちはこのファンタジスタに魅了されるのか」(♯1)
【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」前編
【黄金世代・復刻版】1999 ワールドユース激闘録~銀色の軌跡(前編)

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ