“兵士”酒井の欠点は、「優しすぎるところ」。
そのファンニと一緒に、2月末にはフランス最大テレビ局『TF1』の人気番組「テレフット」に登場した。宿命のライバル、パリSGとのフランス・ダービーをホームで戦う前に、「人生で初めてのダービー」を迎える酒井に焦点を当てた特集だった。
番組内では、酒井が「カバーニはファンニがカバー。ディ・マリアもドラクスラーもファンニがカバーします」と笑わせれば、ファンニも「なんだよ、俺だけ仕事で、お前は安心して眠る気か?」とツッコミ。まるで漫才のような掛け合いを披露した。
また、フランス語の問題もクローズアップされた。ルディ・ガルシア監督が、ある日の記者会見で「フランス語は無能だな」と言い放ったからである。
その追及に対して酒井は胸に手を当て、「僕も心から、一日も早くフランス語を上達させたいと思ってるんです」と語った。すると“相方”ファンニが、「少しは理解できるんだよ。だけど、まだ始動できないみたいなんだ。つまりは、恥ずかしがり屋なんだな」とフォローした。
この件についてはガルシア監督も、「無能というのは意地悪だった。要するにこちらが彼に英語で適応している状況なんだ。フランス語を喋ることはコミュニケーションを取るうえで重要なこと」と釈明し、「酒井は兵士だ。どんな監督でもこういう選手を欲しがると思う」と褒め称えた。
同番組内では、ハノーファー時代に残留をかけた試合で退場処分となり、観衆に頭を下げて謝った映像も流された。これを見たファンニは、「強くて、よく走る。それなのに十分に脚光を浴びていない。優しすぎるんだよ。だから、俺がわざと小突いて、意地悪な反応を引き出そうとしてるんだけど…」と笑った。
すると酒井は、「みんなが優しすぎると言っているのは知っているし、ピッチ上ではそうならないように心がけている。人生では優しさは長所でも、ピッチ上の一定のシーンでは長所じゃないですから」と真剣な表情で答えた。
この番組を見たマルセイユ狂の熱血ファンは言う。
「これがフランス人だったら、優しすぎると馬鹿にされて、潰されちゃうね。でも日本人だから新鮮さ。何より酒井のお蔭でマルセイユの守備がもっているんだから」
実際、『TF1』も、「10人もDFが使われたなかで、酒井だけはポジションを確保した。リアルバリューのひとりだ。まさに美しいサプライズだった」と紹介している。
そしてこの4月、今夏マルセイユの移籍動向を予想したレキップは、「大々的な洗濯」の大見出しとともにマルセイユの選手たちの顔を一面に並べ、生き残りが怪しい選手の顔には「?」を、生き残り困難な選手の顔には「×」を記した。そのなかで生き残りが予想された選手は7人。その筆頭に酒井の顔があった。
ピッチ上の献身性と人柄の誠実さで、信頼を勝ち取った酒井。その好感度はかつてルマンやサンテティエンヌで活躍した松井大輔(現ジュビロ磐田)を上回る。
あとは、チームメイトからも指摘される自己解放あるのみか――。今後はファンだけでなく、超手厳しいジャーナリストたちも唸らせるほどの活躍で、シーズンベストイレブン入りを目ざしたいところだ。
文:結城麻里
番組内では、酒井が「カバーニはファンニがカバー。ディ・マリアもドラクスラーもファンニがカバーします」と笑わせれば、ファンニも「なんだよ、俺だけ仕事で、お前は安心して眠る気か?」とツッコミ。まるで漫才のような掛け合いを披露した。
また、フランス語の問題もクローズアップされた。ルディ・ガルシア監督が、ある日の記者会見で「フランス語は無能だな」と言い放ったからである。
その追及に対して酒井は胸に手を当て、「僕も心から、一日も早くフランス語を上達させたいと思ってるんです」と語った。すると“相方”ファンニが、「少しは理解できるんだよ。だけど、まだ始動できないみたいなんだ。つまりは、恥ずかしがり屋なんだな」とフォローした。
この件についてはガルシア監督も、「無能というのは意地悪だった。要するにこちらが彼に英語で適応している状況なんだ。フランス語を喋ることはコミュニケーションを取るうえで重要なこと」と釈明し、「酒井は兵士だ。どんな監督でもこういう選手を欲しがると思う」と褒め称えた。
同番組内では、ハノーファー時代に残留をかけた試合で退場処分となり、観衆に頭を下げて謝った映像も流された。これを見たファンニは、「強くて、よく走る。それなのに十分に脚光を浴びていない。優しすぎるんだよ。だから、俺がわざと小突いて、意地悪な反応を引き出そうとしてるんだけど…」と笑った。
すると酒井は、「みんなが優しすぎると言っているのは知っているし、ピッチ上ではそうならないように心がけている。人生では優しさは長所でも、ピッチ上の一定のシーンでは長所じゃないですから」と真剣な表情で答えた。
この番組を見たマルセイユ狂の熱血ファンは言う。
「これがフランス人だったら、優しすぎると馬鹿にされて、潰されちゃうね。でも日本人だから新鮮さ。何より酒井のお蔭でマルセイユの守備がもっているんだから」
実際、『TF1』も、「10人もDFが使われたなかで、酒井だけはポジションを確保した。リアルバリューのひとりだ。まさに美しいサプライズだった」と紹介している。
そしてこの4月、今夏マルセイユの移籍動向を予想したレキップは、「大々的な洗濯」の大見出しとともにマルセイユの選手たちの顔を一面に並べ、生き残りが怪しい選手の顔には「?」を、生き残り困難な選手の顔には「×」を記した。そのなかで生き残りが予想された選手は7人。その筆頭に酒井の顔があった。
ピッチ上の献身性と人柄の誠実さで、信頼を勝ち取った酒井。その好感度はかつてルマンやサンテティエンヌで活躍した松井大輔(現ジュビロ磐田)を上回る。
あとは、チームメイトからも指摘される自己解放あるのみか――。今後はファンだけでなく、超手厳しいジャーナリストたちも唸らせるほどの活躍で、シーズンベストイレブン入りを目ざしたいところだ。
文:結城麻里