今、ドイツで最も勢いのあるブレーメン! 驚異の快進撃を支える更生したお騒がせFW

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年04月21日

クラブの我慢強さと信頼の厚さにクルゼは今、恩返しをしている

かつて素行の悪さにより所属クラブを何度も困らせ、ドイツ代表からは“追放”されたクルゼ。ブレーメンのために献身的にプレーする姿で、再びヨアヒム・レーブ監督を振り向かせることができるか。 (C) Getty Images

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 だが、ブレーメンはクルゼの奔放さを受け入れた。9月に膝の手術を受けた後、ポーカーの大会に出るためにチェコへ旅立った時も、クラブはクルゼの後ろに立った。1月のある日の早朝4時に車でガードレールに乗り上げた際にも、クラブ代表取締役フランク・バウマンは彼を庇った。
 
 そんなクラブの我慢強さと信頼の厚さに、クルゼはプレーで恩返しをしている。今では、チームの主軸として欠かせない存在だ。
 
 キープ力と判断力に秀で、常に相手にとって嫌なところにポジションを取り、味方の攻撃を引き出していく。クルゼにボールが入ると、味方選手は信頼してスペースへと駆け出していくのだ。
 
 ハンブルク戦の同点ゴールは、そんな彼らの強みが全て出たものだった。
 
 中盤で相手の縦パスを跳ね返すと、そこからクルゼとユヌゾビッチが細かいダイレクトパス交換で相手のプレスをかいくぐり、タイミング良く攻め上がってきた左SBのガルシアへ展開する。
 
 ガルシアは逆サイドに流れるように走り出すバルテルスを視線の先に見つけると、守備陣の裏へアーリークロス。このボールをバルテルスがゴール前にダイレクトで折り返すと、そこには中盤でボールを捌いていたはずのクルゼが全速力で走り込んでいた!
 
 ハンブルクDF陣を完全に打ち砕く、見事なカウンターによるゴールだった。今やブンデスリーガでも有数の切れ味と言ってもいいほど、そのカウンターは鋭さを誇っている。
 
 ブレーメンは1部リーグ残留をほぼ確実とし、欧州への道も拓けてきた。
 
 ハンブルク戦後、ミックスゾーンに向かう途中でふとスタンドを見上げると、全身をブレーメン・グッズで飾った初老のファンの姿を見つけた。
 
 彼はピッチを見つめながら、にこやかに緑の旗をずっと振り続けていた。ピッチには、もう誰もいない。だが、彼の目には、今でもそこで繰り広げられていた熱戦が残像として映っているのだろう。
 
 そして、来シーズン、欧州の舞台で戦う、愛すべきクラブの姿を描いていたのかもしれない。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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