選ばれた宇佐美と外れた武藤――意外な選考の背景と彼らの決意

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年03月22日

「ここマインツで一番キレているところを見せること」(武藤)

今回の選考では明暗が分かれたふたりだが、今後、クラブ、代表で同じピッチに立つ彼らの姿をどれだけ見られるかが楽しみである。 (C) Getty Images

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 一方の武藤だが、もちろん彼が努力をしていないなどということはない。
 
 むしろ、怪我から復帰してしっかりコンディションを整えており、「ボールさえ来れば決められる、という自信があります」と、常に語っていたほどだ。
 
 だが、良い時のイメージをまだ取り戻せていないのは事実である。スタメン出場をすることがあっても、得点を量産した昨シーズンのように、ボールが集まらないのだ。
 
 マインツは、コロンビア代表ジョン・コルドバが柱のFWとして君臨し、チームの戦い方もまず、コルドバにボールを当てるところから始まる。
 
 2、3人の相手に囲まれてもボールをキープし、強靭な肉体で相手を弾き飛ばして持ち上がるダイナミックさは、確かに凄い。だが、チームメイトがどんな時でもコルドバばかりを探すので、そこで攻撃が停滞してしまうことが多い。
 
 どのように攻撃に絡むべきか。自分の得意なかたちは何なのか。そこと向き合う時間が、武藤には改めて必要だったのかもしれない。
 
 代表から外れたことに関して、武藤は「全く期待していなかったです。むしろ、これで呼ばれたら嫌でした。結果が出せてないし……。ただ単に海外でやってるっていうだけで呼ばれてしまう、そんな甘い世界じゃないって思ってました」と、明瞭な声でしっかりと答えていた。
 
 悔しくないはずがない。だが、だからこそ立ち上がっていかなければならないのだ。
 
「こうなった以上、ここ(マインツ)で親善試合もありますし、そこで一番キレているところを、また見せること。あとは得点。自分の価値を高めるのはやっぱり、海外ではゴールとアシストだけだと思います。そこをどん欲に狙っていきたいです」
 
 重要なのは、選手がどのように今回の決定を受け入れたか、だ。武藤が宇佐美の立場だったら、おそらく同じようなことを口にしていただろう。そして宇佐美もまた、メンバーから外れていたら、武藤のように次に向けて気持ちを切り替えていたはずだ。
 
 ここが終着駅ではない。戦いはまだまだ続いていくのだ。そして選ばれた選手には、様々な人々の思いを背負い、可能な限り最高の準備をして試合に臨んでほしい。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
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