「ここマインツで一番キレているところを見せること」(武藤)
一方の武藤だが、もちろん彼が努力をしていないなどということはない。
むしろ、怪我から復帰してしっかりコンディションを整えており、「ボールさえ来れば決められる、という自信があります」と、常に語っていたほどだ。
だが、良い時のイメージをまだ取り戻せていないのは事実である。スタメン出場をすることがあっても、得点を量産した昨シーズンのように、ボールが集まらないのだ。
マインツは、コロンビア代表ジョン・コルドバが柱のFWとして君臨し、チームの戦い方もまず、コルドバにボールを当てるところから始まる。
2、3人の相手に囲まれてもボールをキープし、強靭な肉体で相手を弾き飛ばして持ち上がるダイナミックさは、確かに凄い。だが、チームメイトがどんな時でもコルドバばかりを探すので、そこで攻撃が停滞してしまうことが多い。
どのように攻撃に絡むべきか。自分の得意なかたちは何なのか。そこと向き合う時間が、武藤には改めて必要だったのかもしれない。
代表から外れたことに関して、武藤は「全く期待していなかったです。むしろ、これで呼ばれたら嫌でした。結果が出せてないし……。ただ単に海外でやってるっていうだけで呼ばれてしまう、そんな甘い世界じゃないって思ってました」と、明瞭な声でしっかりと答えていた。
悔しくないはずがない。だが、だからこそ立ち上がっていかなければならないのだ。
「こうなった以上、ここ(マインツ)で親善試合もありますし、そこで一番キレているところを、また見せること。あとは得点。自分の価値を高めるのはやっぱり、海外ではゴールとアシストだけだと思います。そこをどん欲に狙っていきたいです」
重要なのは、選手がどのように今回の決定を受け入れたか、だ。武藤が宇佐美の立場だったら、おそらく同じようなことを口にしていただろう。そして宇佐美もまた、メンバーから外れていたら、武藤のように次に向けて気持ちを切り替えていたはずだ。
ここが終着駅ではない。戦いはまだまだ続いていくのだ。そして選ばれた選手には、様々な人々の思いを背負い、可能な限り最高の準備をして試合に臨んでほしい。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
むしろ、怪我から復帰してしっかりコンディションを整えており、「ボールさえ来れば決められる、という自信があります」と、常に語っていたほどだ。
だが、良い時のイメージをまだ取り戻せていないのは事実である。スタメン出場をすることがあっても、得点を量産した昨シーズンのように、ボールが集まらないのだ。
マインツは、コロンビア代表ジョン・コルドバが柱のFWとして君臨し、チームの戦い方もまず、コルドバにボールを当てるところから始まる。
2、3人の相手に囲まれてもボールをキープし、強靭な肉体で相手を弾き飛ばして持ち上がるダイナミックさは、確かに凄い。だが、チームメイトがどんな時でもコルドバばかりを探すので、そこで攻撃が停滞してしまうことが多い。
どのように攻撃に絡むべきか。自分の得意なかたちは何なのか。そこと向き合う時間が、武藤には改めて必要だったのかもしれない。
代表から外れたことに関して、武藤は「全く期待していなかったです。むしろ、これで呼ばれたら嫌でした。結果が出せてないし……。ただ単に海外でやってるっていうだけで呼ばれてしまう、そんな甘い世界じゃないって思ってました」と、明瞭な声でしっかりと答えていた。
悔しくないはずがない。だが、だからこそ立ち上がっていかなければならないのだ。
「こうなった以上、ここ(マインツ)で親善試合もありますし、そこで一番キレているところを、また見せること。あとは得点。自分の価値を高めるのはやっぱり、海外ではゴールとアシストだけだと思います。そこをどん欲に狙っていきたいです」
重要なのは、選手がどのように今回の決定を受け入れたか、だ。武藤が宇佐美の立場だったら、おそらく同じようなことを口にしていただろう。そして宇佐美もまた、メンバーから外れていたら、武藤のように次に向けて気持ちを切り替えていたはずだ。
ここが終着駅ではない。戦いはまだまだ続いていくのだ。そして選ばれた選手には、様々な人々の思いを背負い、可能な限り最高の準備をして試合に臨んでほしい。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。