まるで「戦術のデパート」。シメオネ対サンパオリのハイレベルな頭脳戦

カテゴリ:ワールド

江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年03月21日

リードを奪われたサンパオリが打った手とは?

ゴディン(左)の先制点で試合を優位に進めたアトレティコ。セビージャとの勝点差を2ポイントに詰めた。(C)Getty Images

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 もちろんサンパオリも黙っていない。次の手を打ったのは、ハーフタイムだ。後半頭から3バックの一角クレマン・ラングレに代えて、FWステバン・ヨベティッチを投入。4-4-2にしてアタッカーの枚数を増やし、勝負に出る。
 
 キープ力のあるヨベティッチという収まり所ができたことで、セビージャがようやく攻撃の形を作り始める。49分には左サイドを崩してサラビアがヒールでシュートを放つなど、パスを回して決定機を作り出した。
 
 だが一方で、これはシメオネがもっとも得意とする展開でもある。リトリートして守備ブロックを整え、ボールを奪ってから鋭いカウンターを次々に繰り出していく。61分にアントワーヌ・グリエーズマンが叩き込んだ鮮やかなFKも、きっかけとなったのは速攻だった。
 
 この2点目が入った直後、両監督が同じタイミングでカード切った。かたやシメオネは、ケビン・ガメイロに代えてカウンターでより力を発揮できるフェルナンド・トーレス――2点目が入る前から交代の準備はしていた――を投入。かたやサンパオリは、二枚替えに踏み切る。ベン・ヤーデルとサラビアを下げて、ドリブルで運べるホアキン・コレアと長身のビセンテ・イボーラというふたりのMFをピッチに送り出した。
 
 結局、アトレティコはカウンターからコケが3点目を奪い、セビージャは果敢な単独突破からコレアが一矢を報いた。両指揮官の狙いが当たった格好だ。
 
 サンパオリと握手をすることはなく、試合終了の笛が鳴る前にベンチを後にしたシメオネは、「誰もが称賛するシーズンを送っているセビージャを相手に、満足な結果を残せた。今シーズンのベストゲームのひとつ。攻守のバランスがよく、プレスが効いてカウンターも威力を発揮した」と満足気。9節の対戦では0-1で敗れていただけに、してやったりの表情だった。
 
 一方、落胆を隠せなかったのがサンパオリだ。「厳しい状況だ。リーガ制覇とチャンピオンズ・リーグ(CL)のベスト8進出を目指していたのだが……。早く立ち直り、本来の姿を取り戻さなければ」と小声で語った。

 セビージャはやはり、5日前のCLでレスターに敗れたショックを引きずっていたようだ。準々決勝へ駒を進めたアトレティコとの小さくない勢いの差が、結果に表われたと言える。
 
 世界最高峰の戦術家同士が火花を散らした一戦。軍配が上がったのは、リーガとCLの二足の草鞋の履き方を熟知しているシメオネのほうだった。
 
取材・文:江國 森(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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