「ゴール裏は暴力組織」と公に認定…セビージャのウルトラス問題が深刻化

カテゴリ:ワールド

工藤拓

2017年02月10日

排除されるべきは暴力であり、ビリスの応援そのものではない。

サンパオリ新監督の下で、今シーズンのチームは好結果を出している。しかし、ここにきてウルトラス問題が深刻化している。(C)Getty Images

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 しかし、スタジアムからビリスの名だけを取り除くことに、どれだけの意味があるのか。実際、ビリスが活動停止を発表したのはこの決定に抗議するためであって、彼らは実際に解散したわけはないのだ。
 
 何よりスタンドからビリスの横断幕や旗を排除しただけで、サッカーを利用した暴力がなくなるとも思えない。
 
 事実、セビージャのホセ・カストロ・カルモナ会長も、苦しい胸の内を語っている。
 
「暴力事件を起こしたのは一部の人間であり、ビリスという言葉が暴力を意味するわけではない。チームを励まし、支え、後押しするのがビリスだ。しかし、反暴力委員会はそのことを理解してくれなかった」
 
 試合前にアカペラで響き渡るイムノ(応援歌)をはじめ、サンチェス・ピスファンは何度訪れても鳥肌が立つほど素晴らしい雰囲気を体感できるスタジアムだ。そして、ビリスが40年以上に渡ってその中心を担ってきたことは間違いない。
 
 ビリスが活動停止を発表した2日後。ビジャレアル戦前のサンチェス・ピスファンでは、セビージャのソシオ連合が「ジョ・ソイ・ビリ(俺はビリだ)」と書かれたステッカーをサポーターに配っていた。
 
 排除されるべきは暴力であり、ビリスの応援ではない――。それは誰もが分かっていることだ。
 
 しかし、現実的には実際に問題を起こした当事者を罰することしかできない。そして、それでも問題が繰り返されるようであれば、クラブや大会側としてはグループに責任を取らせる他ないのが実情だ。
 
 結局のところ、ビリスが暴力との関係を断たない限り、いつかセビージャはビリスを排除することになるだろう。たとえそれがセビージャのみならず、スペイン・サッカー界にとって大きな損失になるとしても。
 
文:工藤拓
 
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
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