拡大は自由競争の促進を意味する。出場枠増で予選の刺激がなくなるという見方は短絡的。
少数精鋭の利点は濃密さだ。一方欠点を挙げれば、競争が閉鎖的になり、格差が継続され普及が進み難い。その昔、イングランドと言えば「ジャイアント・キリング」が名物だった。特にノックアウト方式のFAカップでは、度々下部リーグのクラブが決勝戦にも顔を出し話題をさらった。ブライアン・クラフ率いるノッティンガム・フォレストは、トップリーグに昇格するとともに優勝を果たし、そのまま欧州制覇も成し遂げている。まだリーグでプレーをするのが英国圏の選手ばかりだった頃の話である。
しかしプレミアリーグが創設され、優勝を争う予算規模を保てるクラブが限られてくると、必然的にチャンピオンズリーグに進む顔ぶれも定まって来た(レスター優勝の後では、少々説得力を欠くが…)。おそらくJリーグも、クラブ数を絞ってトップをプレミア化すれば、今のような戦国模様は沈静化するはずだ。
要するに拡大は、自由競争の促進を意味する。だからそれで予選の刺激がなくなるという見方は短絡だ。日本も1985年メキシコ大会予選の最終決戦で、先にプロ化した韓国に敗れてワールドカップへの切符を逃したことが、後の改革につながった。夢は掴みかけて初めて、実現へのカギが見えて来る。可能性が見えて来れば、中国、タイ、マレーシア、ウズベキスタン、さらにはインドなどの強化にも本腰が入るかもしれない。少子化の進む日本が現状を維持し続ける保証はない。
たぶんワールドカップの参加国拡大は、組織の戦略としては正解なのだろう。五輪も競技数が増加の一途を辿り、マイナーだった女子レスリングやモーグルなどからも国民的スターを生んでいる。ただし濃密な時代のワールドカップを知る立場から、48か国が集結する大会を取材したいかと言われれば、それはまた別の話だ。
取材・文:加部 究(スポーツライター)
しかしプレミアリーグが創設され、優勝を争う予算規模を保てるクラブが限られてくると、必然的にチャンピオンズリーグに進む顔ぶれも定まって来た(レスター優勝の後では、少々説得力を欠くが…)。おそらくJリーグも、クラブ数を絞ってトップをプレミア化すれば、今のような戦国模様は沈静化するはずだ。
要するに拡大は、自由競争の促進を意味する。だからそれで予選の刺激がなくなるという見方は短絡だ。日本も1985年メキシコ大会予選の最終決戦で、先にプロ化した韓国に敗れてワールドカップへの切符を逃したことが、後の改革につながった。夢は掴みかけて初めて、実現へのカギが見えて来る。可能性が見えて来れば、中国、タイ、マレーシア、ウズベキスタン、さらにはインドなどの強化にも本腰が入るかもしれない。少子化の進む日本が現状を維持し続ける保証はない。
たぶんワールドカップの参加国拡大は、組織の戦略としては正解なのだろう。五輪も競技数が増加の一途を辿り、マイナーだった女子レスリングやモーグルなどからも国民的スターを生んでいる。ただし濃密な時代のワールドカップを知る立場から、48か国が集結する大会を取材したいかと言われれば、それはまた別の話だ。
取材・文:加部 究(スポーツライター)