【識者の視点】W杯出場枠の大幅拡大でも日本が連続出場を維持する保証はない理由

カテゴリ:国際大会

加部 究

2017年01月16日

拡大は自由競争の促進を意味する。出場枠増で予選の刺激がなくなるという見方は短絡的。

スター選手を抱える強豪国は、日程面などで難しい問題を抱えることになるかもしれない。(C) Getty Images

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 少数精鋭の利点は濃密さだ。一方欠点を挙げれば、競争が閉鎖的になり、格差が継続され普及が進み難い。その昔、イングランドと言えば「ジャイアント・キリング」が名物だった。特にノックアウト方式のFAカップでは、度々下部リーグのクラブが決勝戦にも顔を出し話題をさらった。ブライアン・クラフ率いるノッティンガム・フォレストは、トップリーグに昇格するとともに優勝を果たし、そのまま欧州制覇も成し遂げている。まだリーグでプレーをするのが英国圏の選手ばかりだった頃の話である。
 
 しかしプレミアリーグが創設され、優勝を争う予算規模を保てるクラブが限られてくると、必然的にチャンピオンズリーグに進む顔ぶれも定まって来た(レスター優勝の後では、少々説得力を欠くが…)。おそらくJリーグも、クラブ数を絞ってトップをプレミア化すれば、今のような戦国模様は沈静化するはずだ。
 
 要するに拡大は、自由競争の促進を意味する。だからそれで予選の刺激がなくなるという見方は短絡だ。日本も1985年メキシコ大会予選の最終決戦で、先にプロ化した韓国に敗れてワールドカップへの切符を逃したことが、後の改革につながった。夢は掴みかけて初めて、実現へのカギが見えて来る。可能性が見えて来れば、中国、タイ、マレーシア、ウズベキスタン、さらにはインドなどの強化にも本腰が入るかもしれない。少子化の進む日本が現状を維持し続ける保証はない。
 
 たぶんワールドカップの参加国拡大は、組織の戦略としては正解なのだろう。五輪も競技数が増加の一途を辿り、マイナーだった女子レスリングやモーグルなどからも国民的スターを生んでいる。ただし濃密な時代のワールドカップを知る立場から、48か国が集結する大会を取材したいかと言われれば、それはまた別の話だ。
 
取材・文:加部 究(スポーツライター)
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