【選手権】連戦と疲労、重圧…。青森山田はなぜ困難を乗り越え、初優勝を掴めたのか

カテゴリ:高校・ユース・その他

安藤隆人

2017年01月10日

攻守の勝負どころで集中力を発揮。「埼スタで勝つために、選手一人ひとりが自分と向き合ってきた」

今大会5試合を守り抜いた廣末。決勝では足を痛めながらも無失点で乗り切った。写真:田中研治

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 彼らは今大会、疲労だけでなく、相当な重圧と戦った。だが、結果としてすべてに打ち克ち、初めての選手権の栄冠を掴み取った。今大会の戦いぶりを振り返ってみると、これまでのチームにありがちな『勝負弱い』という要素がなかった。
 
 どの試合でもピンチはあったが、DF陣が踏ん張り、さらにGK廣末陸が絶大な存在感を放った。
 
 初戦・鵬翔戦では、立ち上がりに迎えた大ピンチをGK廣末がファインセーブで凌ぐと、ここから攻撃陣が爆発し5得点。3回戦の聖和学園戦では相手のリズムに持ち込ませることなく、押し切っての5−0の勝利。準々決勝の正智深谷戦でも先に3ゴールを奪っての3−1の勝利。
 
 そして、準決勝の東海大仰星戦でも、「前半を引き分けで折り返してくるのと、勝ち越して追い越してくるのとでは雲泥の差。選手たちはよく前半で勝ち越してくれた。要所を感じ取る力がついて来た」と黒田監督が語ったように、先制直後に追いつかれるという嫌な展開だったが、前半終了間際にエースのMF高橋壱晟が勝ち越し弾を決めて、流れを引き寄せてから前半を終えたことに、チームの成長を感じていた。
 
 決勝では立ち上がりの不安定さからピンチを招くが、「選手たちに『緊張するな』と言っても無理があった。それに新聞で読みましたが、前橋育英はこの一戦に『失う物は何もない、チャレンジャー精神で』と言っていたように、立ち上がりから一気に前に来た。でも、そこを凌いで、かつ前半のうちに2点取れたことが勝因だった」と、黒田監督が語ったように、選手たちは逞しさを見せた。GK廣末を中心に相手の攻勢を凌ぎ切り、高橋の先制弾を皮切りに怒濤のゴールラッシュで5−0。
 
 スコアに注目すれば、大会を通じて横綱相撲で戴冠したようにも見えるが、毎試合ピンチがあり、悪い流れもあった。だが、彼らは要所を押さえた守備と効率の良い攻撃で、すべて勝ち切った。
 
 そこには当然疲労もあり、プレッシャーもあった。それらすべてを受け入れて、攻守の勝負所で集中力を発揮し、一歩一歩確実な歩みで山を登り切って、初栄冠を掴み取った。
 
「昨年の3位で終わって、埼スタで勝つために、選手一人ひとりがきちんと自分と向き合って、1年間コツコツとやって来てくれた。悪いなかでも勝って行くという経験を重ねて、試合ごとにそれぞれが反省点を持って、それを共有してやっていけるということが強み」(黒田監督)
 
 青森山田は今シーズン、幾多の厳しい試合を、厳しい環境の下で重ねてきた。そして、そのなかで黒田監督の下、1年掛けて信頼関係と約束事を築き上げ、チームを成熟させてきた。だからこそ、彼らは2つの大きな山を連続で制することができたのだ。
 
 この偉業は様々な困難と戦った先に掴み取ったもの。それだけに、青森山田にとって初の選手権タイトルは、我々が考える以上に意義深く大きな成果であったと言える。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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