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【日本代表秘話】森重真人の転機は2010年。「僕はあの年を境に大人のフットボーラーになっていった」

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2016年12月22日

「年間ワーストプレーヤー」。森重真人は、2010年の自分をそう振り返る。

FC東京での1年目は「やりたいプレーをしていた」と振り返る。勢いがあった半面、ゲームを壊すことも。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 横浜F・マリノスとの開幕戦にCBとしてフル出場した森重は、1-0のクリーンシートに貢献した。まるでボランチのようにパスを捌き、時にはドリブルで突き進んでいく。そのプレーは「エレガント」という表現がしっくりとくるものだった。
 
 だが、それ故の危うさを常にはらんでいた。「今思えば、ですよ」と念を押してから、森重が言う。
 
「当時はプレーを一番楽しんでいた時期で、良くも悪くもプレッシャーや責任を感じてなくて、『俺はこういう選手だ』っていうのをガツガツ出して、やりたいプレーをしていた。考えてサッカーをする?なんだそれ?って感じで」
 
 そのシーズンを象徴する出来事が、2節の浦和戦で起きる。PKを与えたばかりか、前半のうちに二度目の警告を受け、退場を宣告されるのだ。
 
 ゲームを壊したのは、その1試合だけではなかった。
 
 13節のヴィッセル神戸戦では終了間際にハンドを犯してPKを献上すると、19節のセレッソ大阪戦でも前半のうちに退場となった。30節の横浜戦は累積警告によって出場できず、31節の川崎戦でも決勝ゴールのきかっけとなるミスを犯してしまう……。
 
 不安定なパフォーマンスの背景には、前年に負った怪我の影響もあった。右膝の痛みが限界に達した2009年9月末、手術に踏み切り、その後のシーズンを棒に振った。本来ならじっくりリハビリに励み、段階的に練習に合流すべきだったが、移籍したばかりでアピールしたい気持ちが復帰の時期を早めてしまった。
 
 だが、それ以上に問題だったのは、森重自身も認める「甘さ」だった。
 
「大きな怪我は初めてだったし、身体に気を使うタイプでもなかったので、そのうち治るでしょ、って甘く見ていた。そうしたら思っていた以上に馴染んでこなくて、何か違うなって。でも、何が違うのか突き詰めようともしなかった」
 
 怪我人が相次いだこともあり、不調に陥ったチームは、監督を交代しても好転しなかった。森重自身もついにベストコンディションを取り戻せないまま最終節を迎え、J2に降格してしまう。
 
 その責任について、森重がしっかりと受け止めるようになるのは、シーズンオフに入ってからだった。
 
「いろんな人と会って話を聞いたんです。その中のひとりに小学生時代の恩師がいたんですけど、その方から『子どもたちにお前のプレーを見せられん』って言われて、あれは堪えましたね」
 
 別の者には「家族のことも考えろ」と諭された。
 
「その年に結婚したんですけれど、妻が観戦している試合で僕のミスで負けたりすると、肩身の狭い思いをしているっていう話も聞いて、ああ、申し訳なかったなって。『怪我明けだからしょうがない』って開き直っていた部分もあったけど、このままでは未来はないなって」
 
 生まれ変わることを誓った森重に手を差し伸べてくれたのは、コーチの長澤徹と長島裕明だった。
  
 今はファジアーノ岡山、徳島ヴォルティスを率いるふたりは、事あるごとに森重に助言を送った。それは時にひと言、ふた言だったが、森重の脳裏をパッと晴らす、価値のあるものばかりだった。
 
「基本的な足の運び方だったり、メンタルのことだったり、僕の悪いクセのことだったり。そういう助言を頭に叩き込んで、練習に臨むようにしたんです」
 
 練習中には競り合ったFWの選手に「今の、ファウルだった?」と確認し、ファウルの基準を整理した。
 
「それまではボールを奪うことしか考えていなかったんですけど、このタイミングなら飛び込まないほうがいいなとか。小学生で学ぶような基本を一つひとつ整理した。基本を完璧にこなすのは実は簡単じゃない。でも、それをしっかりやっていたのが、今野さんだった」
 
 最高のお手本は、身近にいたのだ。
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