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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の九十八「当代最高の監督はペップで決まりだが、今年に限って見ると…!?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年11月24日

器がでかく、誰でも懐に入れてしまう、エゴのないサントス監督。

2014年のブラジルW杯では前評判の低かったギリシャをベスト16に導き、2年後には母国を欧州王者に引き上げたサントス監督。他の誰とも違う、ユニークな指揮官でもある。 (C) Getty Images

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 しかし、2016年だけを考えた場合、最優秀監督の称号は、ポルトガル代表をEURO2016優勝に導いたフェルナンド・サントス監督に与えられるべきかもしれない。
 
「私はジダンよりも、サントスに票を入れるよ。なぜなら、ポルトガルを欧州王者にする方が、マドリーを王者にするよりも難しいからだ」
 
 クリスチアーノ・ロナウドはそう語ったが、タイトル云々の話だけではないだろう。
 
 サントスはポルトガルというチームをひとつに束ねた。その求心力は、全員をぐいぐいと引っ張るようなものではない。
 
「巨大なずた袋」という表現が正しいだろうか。器がでかく、誰でも懐に入れてしまう。サントスという指導者のエゴは見えず、サントスという“袋”に選手が入ることで、そのかたちや大きさが変わるのだ。
 
 ベテランから若手(18歳のレナト・サンチェス、39歳のリカルド・カルバリョまで)、様々な性格の選手たち(リカルド・クアレスマは素行の問題で多くの監督が困り果てるほどであり、エデルは児童施設に入れられた過去を持ち、性格や調子が不安定で招集は反対されていた)を一緒くたにし、大会を戦い切った。
 
 そもそも、エースのC・ロナウドですら、この大会は絶不調で、チームの足手まといになっていたのだ。
 
「選手の力を信じた」
 
 恬淡と語った指揮官のチームマネジメントは、称賛に値するだろう。
 
 日本人監督には、サントスのように達観し、スター選手をも束ねられる大親分はいないだろう。
 
 キャラクターは異なるが、2010年の南アフリカ・ワールドカップで日本代表を率いた岡田武史監督は、サントスの境地に近いかもしれない。
 
 追求してきた戦い方がままならず、直前で選手たちのなかで戦術変更を求められることになった。それに対して岡田監督は鷹揚に構え、打算的に持論を曲げ、選手たちの意見に従っている。かたちに囚われない変わり身は、リーダーとしての英断だったと言える。
 
 一方、グアルディオラに匹敵する日本人指導者は、まだ登場していない。
 
 チャンピオンシップ制覇に挑戦した川崎フロンターレ(準決勝で鹿島アントラーズに敗退)の風間八宏監督は唯一、同じ匂いがする。しかし、革命までは起こせていない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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