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「いつか浩司さんのような選手に」同じ想いを持つ青山と柏木は去りゆく男の苦闘と凄みに何を感じたか

カテゴリ:Jリーグ

中野和也

2016年11月14日

「オレが練習場にやってくるまで、ずっと待っていただろう。それが本当に嬉しかったんだ」

森﨑浩から多大な影響を受けた青山。本人の引退の告白には涙が止まらなかったという。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 何もできない。手を差し延べてあげたくても、それが正しいのかどうかも、分からない。それが、ノーマルだ。
 
 だが青山は、違う。その何もできなかった状態にある自分が、許せなかった。
「どうしてもっと、浩司さんの支えになれなかったのか。浩司さんの苦しみは、分かっていたはずなのに」
 
 自分が何度も長期離脱を重ねていたからこそ、自分が浩司を助けなければならない。でも、それができない自分の歯がゆさ。
 「本当に後悔しています。特に2013年の頃は、自分は怪我もしていなかった。14年からはキャプテンだった。なのに、俺は何も、浩司さんにしてあげられなかった。本当に何もできなかった。もっと、何かができたはず。本当に、何かができたはずだったのに」
 
 後悔の念が募り、青山の涙は止まらない。その姿を見て、浩司はゆっくりと話しかけた。
「アオ。覚えているか。オレが練習に戻ってきた頃のことを。あの時はまだ、オレはチームのみんなと一緒に練習はできなかった。だから午前中にみんながトレーニングした後、オレは午後から、ひとりで練習していただろう。覚えているか」
 
 青山は、たしかに覚えていた。
「その時さ、練習を終えたアオがグラウンドで、ずっと待ってくれただろう。オレが歩いて練習場にやってくるまで、待ってくれていただろう。それが本当に嬉しかったんだ。アオがオレを待っている気持ちが、すごく伝わってきたから」
 
 キャプテンは、さらに泣いた。
 
 救われた――。そう思ったからだ。
 
 青山の涙は、まったく枯れなかった。10月19日、浩司が選手・スタッフたちの前で「引退」の意志を告白した時も。そして10月29日、引退試合の時も。
 
「引退セレモニーは、グッとくるどころではなかった。やばかった。やっぱり浩司さんは、クオリティが半端なく高い。今日は、常に浩司さんを見ながら、サッカーをしていた。浩司さんが中心のサッカーだった。まだまだ教えられることが多い。これが広島のサッカーだってところを見せてくれた。こんなにずっと一緒にやってきた人の引退、ずっと一緒に戦い続けてきた人の引退、苦しみの質は違うけれど、お互いに苦難を乗り越え合った人の引退……。うーん……」
 
 言葉が出てこない。考えて、考えて。しばらくの沈黙の後、青山は静かに語り出した。
 
「浩司さんはやり切った。すべてを出し切った。そして浩司さんは、闘いに勝利したんです。『浩司さんのような選手』に(自分も)なりたい」
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