「オレが練習場にやってくるまで、ずっと待っていただろう。それが本当に嬉しかったんだ」
何もできない。手を差し延べてあげたくても、それが正しいのかどうかも、分からない。それが、ノーマルだ。
だが青山は、違う。その何もできなかった状態にある自分が、許せなかった。
「どうしてもっと、浩司さんの支えになれなかったのか。浩司さんの苦しみは、分かっていたはずなのに」
自分が何度も長期離脱を重ねていたからこそ、自分が浩司を助けなければならない。でも、それができない自分の歯がゆさ。
「本当に後悔しています。特に2013年の頃は、自分は怪我もしていなかった。14年からはキャプテンだった。なのに、俺は何も、浩司さんにしてあげられなかった。本当に何もできなかった。もっと、何かができたはず。本当に、何かができたはずだったのに」
後悔の念が募り、青山の涙は止まらない。その姿を見て、浩司はゆっくりと話しかけた。
「アオ。覚えているか。オレが練習に戻ってきた頃のことを。あの時はまだ、オレはチームのみんなと一緒に練習はできなかった。だから午前中にみんながトレーニングした後、オレは午後から、ひとりで練習していただろう。覚えているか」
青山は、たしかに覚えていた。
「その時さ、練習を終えたアオがグラウンドで、ずっと待ってくれただろう。オレが歩いて練習場にやってくるまで、待ってくれていただろう。それが本当に嬉しかったんだ。アオがオレを待っている気持ちが、すごく伝わってきたから」
キャプテンは、さらに泣いた。
救われた――。そう思ったからだ。
青山の涙は、まったく枯れなかった。10月19日、浩司が選手・スタッフたちの前で「引退」の意志を告白した時も。そして10月29日、引退試合の時も。
「引退セレモニーは、グッとくるどころではなかった。やばかった。やっぱり浩司さんは、クオリティが半端なく高い。今日は、常に浩司さんを見ながら、サッカーをしていた。浩司さんが中心のサッカーだった。まだまだ教えられることが多い。これが広島のサッカーだってところを見せてくれた。こんなにずっと一緒にやってきた人の引退、ずっと一緒に戦い続けてきた人の引退、苦しみの質は違うけれど、お互いに苦難を乗り越え合った人の引退……。うーん……」
言葉が出てこない。考えて、考えて。しばらくの沈黙の後、青山は静かに語り出した。
「浩司さんはやり切った。すべてを出し切った。そして浩司さんは、闘いに勝利したんです。『浩司さんのような選手』に(自分も)なりたい」
だが青山は、違う。その何もできなかった状態にある自分が、許せなかった。
「どうしてもっと、浩司さんの支えになれなかったのか。浩司さんの苦しみは、分かっていたはずなのに」
自分が何度も長期離脱を重ねていたからこそ、自分が浩司を助けなければならない。でも、それができない自分の歯がゆさ。
「本当に後悔しています。特に2013年の頃は、自分は怪我もしていなかった。14年からはキャプテンだった。なのに、俺は何も、浩司さんにしてあげられなかった。本当に何もできなかった。もっと、何かができたはず。本当に、何かができたはずだったのに」
後悔の念が募り、青山の涙は止まらない。その姿を見て、浩司はゆっくりと話しかけた。
「アオ。覚えているか。オレが練習に戻ってきた頃のことを。あの時はまだ、オレはチームのみんなと一緒に練習はできなかった。だから午前中にみんながトレーニングした後、オレは午後から、ひとりで練習していただろう。覚えているか」
青山は、たしかに覚えていた。
「その時さ、練習を終えたアオがグラウンドで、ずっと待ってくれただろう。オレが歩いて練習場にやってくるまで、待ってくれていただろう。それが本当に嬉しかったんだ。アオがオレを待っている気持ちが、すごく伝わってきたから」
キャプテンは、さらに泣いた。
救われた――。そう思ったからだ。
青山の涙は、まったく枯れなかった。10月19日、浩司が選手・スタッフたちの前で「引退」の意志を告白した時も。そして10月29日、引退試合の時も。
「引退セレモニーは、グッとくるどころではなかった。やばかった。やっぱり浩司さんは、クオリティが半端なく高い。今日は、常に浩司さんを見ながら、サッカーをしていた。浩司さんが中心のサッカーだった。まだまだ教えられることが多い。これが広島のサッカーだってところを見せてくれた。こんなにずっと一緒にやってきた人の引退、ずっと一緒に戦い続けてきた人の引退、苦しみの質は違うけれど、お互いに苦難を乗り越え合った人の引退……。うーん……」
言葉が出てこない。考えて、考えて。しばらくの沈黙の後、青山は静かに語り出した。
「浩司さんはやり切った。すべてを出し切った。そして浩司さんは、闘いに勝利したんです。『浩司さんのような選手』に(自分も)なりたい」