その真意やいかに!? ドルトムント・トゥヘル監督が引き起こした「ファウル論争」

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2016年10月07日

ファウルをする側、される側が考えなければならないこととは!?

コーラーの言うように、トゥヘル監督が一石を投じたのか!? あるいは、理想主義者にとっては、レバークーゼンのやり方は受け入れられなかっただけなのか!? (C) Getty Images

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 まず、ファウルの数だけで比較していては、この議論は成り立たないだろう。
 
 定められた規約の下、これに逸脱した行為がファウルと判定され、相手ボールから試合が再開される。そして、やり過ぎと判断されたファウルにはイエローカードやレッドカードが提示され、それに伴う罰則が科せられることで、バランスが取られているわけだ。
 
 かつて、レバークーゼンで監督を務めたクラウス・アウゲンターラーは、こう指摘する。
 
「どんなチームでも、ファウルのやり過ぎでカードをもらわないよう、気を付けているはずだ。自分たちから数的不利にはなりたくないからね。だから、激しいなかにもフェアプレーを保とうと心掛ける」
 
 激しく行きながらも、それで自分たちが不利にならないようにギリギリのラインを守らなければならない。激しく行きさえすれば全てがうまくいく、という保証はない。プレスは勢い良く行けば行くほど、そこで取り切れなかった時のダメージが大きい。
 
 あるポイントに人と労力を割くということは、ピッチ内の別の場所に自分たちがケアし切れない状況が生まれてしまうことと表裏一体である。そして、この動きが徒労に終わってしまえば、精神的にも響いてくる。対戦相手は、彼らなりのリスクを背負いながら戦っているのだ。
 
 ドルトムントがファウル数に苦しめられたという事実は、相手にギリギリのラインを守らせることを許してしまったということではないだろうか。そして、そのことをトゥヘル自身も認識しているからこそ、つい我慢できずに口にしてしまったのかもしれない。
 
 一方、元ドイツ代表で、現役時代は世界最強のストッパーと呼ばれていたユルゲン・コーラーは、別の見解を示している。
 
「試合を見ていたが、そんなに激しいとは思わなかった。トゥヘルは敢えて、問題提起したんじゃないか。まだ若く、ガツガツした競り合いに慣れていない選手を多く抱えているだけにね。審判にも、それとなくアピールしようとしたんだろう。昔のバイエルンがそうだった」
 
 いずれにしても、どんなに優れたドリブラーでも、ドリブルをするだけでは相手の守備の餌食になる。だから、どこでどのようにスイッチを入れるかがカギになるし、相手のファウルを予見したボールの持ち方や離し方を身に付けることが重要だ。
 
 バイエルンのアリエン・ロッベンはすでに32歳となり、怪我がちではあるが、試合に出ると必ず決定的な仕事をしてみせるのは、こうした武器の使い分けが非常に巧みだからだろう。
 
 ドルトムントの若き才能たちは、激しい競り合いを受け入れながらも、自分の長所をどのように発揮すれば有用なのかというテーマに、彼らなりの答えを見つけなければならないのだ。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
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