「解決しなければいけない問題がたくさんあります」
そして、もうひとつの懸念は、主力流出の問題だった。プロ内定の選手たちが次々に前倒しでJクラブに進んでしまったら、各大学の戦力ダウンはもとより、ひいては大学サッカー界全体の競争力の低下をも招きかねない。「あくまでも要望・提案の段階」と前置きしながら、次のような具体策を打ち明けた。
「選手たちには職業選択の自由があるので、サッカー部を退部してプロに行きたいと言われたら、大学側は引き留めることができません。私たちとしては正直、葛藤がありますが、それはともかく何らかの抑止策が必要でしょう。そこで、Jクラブが前倒しで選手を獲得する際は、金銭的な補償を伴うというのを制度化できないかと伝えました。いわゆるローカルルールですが、これによって多少なりとも主力の流出が抑えられるのでは、と考えています」
現在、アマチュアの選手がプロクラブと契約する際、在籍していたチームに獲得クラブからトレーニング補償金が支払われている。これは国際ルールとして定められている制度だが、「それとは別途、金銭的な条件を設けられないか」というわけだ。
「今はまだJリーグ側に伝えた段階で、実際に制度化できるのか、制度化できたとしても補償金をいくらに設定するのか、解決しなければいけない問題がたくさんあります。J1からJ3までの60クラブによって受け止め方も違うでしょう。どのような結論になるか、まったく分かりませんが、Jリーグのなかで議論してもらうことが何より大切だと考えています」
「選手たちには職業選択の自由があるので、サッカー部を退部してプロに行きたいと言われたら、大学側は引き留めることができません。私たちとしては正直、葛藤がありますが、それはともかく何らかの抑止策が必要でしょう。そこで、Jクラブが前倒しで選手を獲得する際は、金銭的な補償を伴うというのを制度化できないかと伝えました。いわゆるローカルルールですが、これによって多少なりとも主力の流出が抑えられるのでは、と考えています」
現在、アマチュアの選手がプロクラブと契約する際、在籍していたチームに獲得クラブからトレーニング補償金が支払われている。これは国際ルールとして定められている制度だが、「それとは別途、金銭的な条件を設けられないか」というわけだ。
「今はまだJリーグ側に伝えた段階で、実際に制度化できるのか、制度化できたとしても補償金をいくらに設定するのか、解決しなければいけない問題がたくさんあります。J1からJ3までの60クラブによって受け止め方も違うでしょう。どのような結論になるか、まったく分かりませんが、Jリーグのなかで議論してもらうことが何より大切だと考えています」
これまでに前倒ししてJクラブに進んだ選手がいないわけではない。上田綺世(元・法政大)や長友佑都(元・明治大)、武藤嘉紀(元・慶応大)など、大学のサッカー部を退部し、Jクラブや海外クラブ、そして日本代表と活躍の場を広げた選手たちがいる。近年は、卒業を待たず、Jクラブどころか、いきなり海外に新天地を求める選手も少なくない。
一方で、三笘薫(元・筑波大)、伊東純也(元・神奈川大)、守田英正(元・流経大)、相馬勇紀(元・早稲田大)、旗手怜央(元・順天大)など、名を挙げていったらきりがないが、大学4年間を過ごしてからJクラブに進み、海外クラブ、日本代表へと羽ばたく選手もいる。
選手にとって、どのような道を選択するのが、最善なのか。
流経大のサッカー部監督であり、スポーツ健康科学部の教授でもあり、これまで多くの選手たちを見てきた中野理事長であっても「その答えは非常に難しいですね」と苦笑しつつ、こう言葉をつなぐ。
「小さいころからプロになりたいと思いながらサッカーに取り組んできて、実際にJクラブからオファーを受けて、その夢が叶うとなったら、少しでも早くプロの世界に飛び込みたい。そういう選手たちの気持ちも分からないではありません。ただ、大学4年生というのは、ピッチ内外でいろいろな責任を負いながら過ごすので、選手としてだけではなく、人としてもすごく成長できる時期です。やはり大学での4年間をまっとうしてほしいなとは感じますね」
大学サッカー界はそもそもプロの養成機関ではなく、あくまでも社会に役立つ人材育成が理念だ。とはいえ、高い競争力のなかで、切磋琢磨しながら、毎年、数多くのプロ選手を輩出しているのもまた事実だ。
Jリーグのシーズン移行に伴い、大きな分岐点にある大学サッカー界が、今後もこうした役割を果たしていくのか。世界的にあまり例を見ない独自のサッカー文化を育んでいくのか。その答えは5年後、10年後にあるのだろう(このシリーズ了)。
取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)
記事:【揺れる大学サッカー界|前編】Jリーグのシーズン移行にどう対応すべきか。中野理事長の本音「“さあ、どうぞ”と簡単には言えません」
記事:卒業を待たずにプロの世界へ。秋春制移行に伴う大学サッカーの現状。チームの監督であり教育者はどう捉えているのか
【画像】日向坂や乃木坂の人気メンバー、ゆうちゃみ、加護亜依ら豪華タレント陣が来場、Jリーグのスタジアムに華を添えるゲストを特集
一方で、三笘薫(元・筑波大)、伊東純也(元・神奈川大)、守田英正(元・流経大)、相馬勇紀(元・早稲田大)、旗手怜央(元・順天大)など、名を挙げていったらきりがないが、大学4年間を過ごしてからJクラブに進み、海外クラブ、日本代表へと羽ばたく選手もいる。
選手にとって、どのような道を選択するのが、最善なのか。
流経大のサッカー部監督であり、スポーツ健康科学部の教授でもあり、これまで多くの選手たちを見てきた中野理事長であっても「その答えは非常に難しいですね」と苦笑しつつ、こう言葉をつなぐ。
「小さいころからプロになりたいと思いながらサッカーに取り組んできて、実際にJクラブからオファーを受けて、その夢が叶うとなったら、少しでも早くプロの世界に飛び込みたい。そういう選手たちの気持ちも分からないではありません。ただ、大学4年生というのは、ピッチ内外でいろいろな責任を負いながら過ごすので、選手としてだけではなく、人としてもすごく成長できる時期です。やはり大学での4年間をまっとうしてほしいなとは感じますね」
大学サッカー界はそもそもプロの養成機関ではなく、あくまでも社会に役立つ人材育成が理念だ。とはいえ、高い競争力のなかで、切磋琢磨しながら、毎年、数多くのプロ選手を輩出しているのもまた事実だ。
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