柴崎は無言のままスタジアムを去る。トラッキングデータは柏木に勝っていたが……。
柏木は振り返る。
「鹿島のサイドの裏にスペースができていた。ポジションを前(シャドー)に移したら、そこを狙えると思っていた。ハーフタイムにも、そのような話をみんなにしていた。そこに、ウメちゃん(梅崎司)から良い縦パスが来た」
先制された直後の62分、柏木が右サイドの深い位置に飛び出すと、梅崎からライン際に放たれた縦パスが通る。そしてフリーになった柏木がダイレクトで、右足からクロスを放つ――。
「チュンくん(李)がスピードに変化をつけながら、前にスペースを作っていた。(利き足とは逆の)右足だったので、そこへ丁寧にパスを出すことを考えた。ずっと練習しているふたりの意思疎通から、ゴールにつなげられた」
そう語る柏木の絶妙なキックがGK曽ヶ端準とDFファン・ソッコの間を突き、李の同点ゴールが生まれる。
この得点時、ポジションを代えていた柏木と柴崎はマッチアップする構図ではなくなっていた。ただ、両チームともカウンターを応酬し合う展開のなかでマークがズレて、サイドに流れる柏木に対応していたのは柴崎だった。
しかし柏木が一気にスピードを上げると、柴崎は追うのをやめて昌子にマークを委ねた。このマークの受け渡しで完全に一歩遅れ、ゴール前にできたギャップを突かれたのだ。
このあとも主導権を握った浦和が攻め込み、73分に速攻から武藤雄樹の放ったシュートを曽ヶ端がファンブル。再び李が叩き込み、ついに2-1と逆転に成功する。アウェーチームは相手がたじろいだところを見逃さなかった。
「この試合は勝たなければいけなかった。その強い気持ちが、逆転勝利をもたらした。それに、走って、戦う姿勢を示したかった。しっかり上位に食らいついていきたい」
柏木は“戦い切って”掴んだ勝点3に、確かな手応えを掴んでいた。
一方、柴崎は無言のまま足早に車に乗り込み、カシマスタジアムをあとにした。トラッキングデータを見ると、走行距離は柴崎が11.792㌔(チーム1位)、柏木が11.169㌔(チーム3位=1位梅崎、2位関根貴大)、スプリント回数は柴崎が20回(同2位)、柏木が19回(同4位)と、いずれも上回っている。それでも勝負どころや鍵を握る局面では、特に後半は柏木のほうが走り勝っている印象を残した。
日本代表の「ポスト遠藤保仁」と言われる、鹿島と浦和の背番号10対決。その駆け引きや球際の攻防は、プライドが漲り見応えがあった。
前半は柴崎が組織の中心で機能し、後半は柏木が攻撃を大きく変化させて――結果、浦和の逆転勝利。チームの生命線と言えるふたりのパフォーマンスが、大一番の行方を左右した。今回は柏木に軍配が上がった。
再戦があるとすれば、チャンピオンシップだ――。
取材・文●塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
「鹿島のサイドの裏にスペースができていた。ポジションを前(シャドー)に移したら、そこを狙えると思っていた。ハーフタイムにも、そのような話をみんなにしていた。そこに、ウメちゃん(梅崎司)から良い縦パスが来た」
先制された直後の62分、柏木が右サイドの深い位置に飛び出すと、梅崎からライン際に放たれた縦パスが通る。そしてフリーになった柏木がダイレクトで、右足からクロスを放つ――。
「チュンくん(李)がスピードに変化をつけながら、前にスペースを作っていた。(利き足とは逆の)右足だったので、そこへ丁寧にパスを出すことを考えた。ずっと練習しているふたりの意思疎通から、ゴールにつなげられた」
そう語る柏木の絶妙なキックがGK曽ヶ端準とDFファン・ソッコの間を突き、李の同点ゴールが生まれる。
この得点時、ポジションを代えていた柏木と柴崎はマッチアップする構図ではなくなっていた。ただ、両チームともカウンターを応酬し合う展開のなかでマークがズレて、サイドに流れる柏木に対応していたのは柴崎だった。
しかし柏木が一気にスピードを上げると、柴崎は追うのをやめて昌子にマークを委ねた。このマークの受け渡しで完全に一歩遅れ、ゴール前にできたギャップを突かれたのだ。
このあとも主導権を握った浦和が攻め込み、73分に速攻から武藤雄樹の放ったシュートを曽ヶ端がファンブル。再び李が叩き込み、ついに2-1と逆転に成功する。アウェーチームは相手がたじろいだところを見逃さなかった。
「この試合は勝たなければいけなかった。その強い気持ちが、逆転勝利をもたらした。それに、走って、戦う姿勢を示したかった。しっかり上位に食らいついていきたい」
柏木は“戦い切って”掴んだ勝点3に、確かな手応えを掴んでいた。
一方、柴崎は無言のまま足早に車に乗り込み、カシマスタジアムをあとにした。トラッキングデータを見ると、走行距離は柴崎が11.792㌔(チーム1位)、柏木が11.169㌔(チーム3位=1位梅崎、2位関根貴大)、スプリント回数は柴崎が20回(同2位)、柏木が19回(同4位)と、いずれも上回っている。それでも勝負どころや鍵を握る局面では、特に後半は柏木のほうが走り勝っている印象を残した。
日本代表の「ポスト遠藤保仁」と言われる、鹿島と浦和の背番号10対決。その駆け引きや球際の攻防は、プライドが漲り見応えがあった。
前半は柴崎が組織の中心で機能し、後半は柏木が攻撃を大きく変化させて――結果、浦和の逆転勝利。チームの生命線と言えるふたりのパフォーマンスが、大一番の行方を左右した。今回は柏木に軍配が上がった。
再戦があるとすれば、チャンピオンシップだ――。
取材・文●塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)