ヤマルは自分を隠すのではなく、曝け出す。プレッシャーから逃げるのではなく、探し求め、受け入れる。模範となることを望まず、考え込まれた言葉と信念を曲げない姿勢で超越した存在になることを目指す。その野心家ぶりは言葉、プレー、数々の最年少記録、ジェスチャー、そして髪型、キャップ、笑顔、出身地ロカフォンダ地区の郵便番号の下３桁の数字「304」を示すサインなどのアイコン的な要素に表れている。

　しかし同時にヤマルは手なずけるのが難しい選手だ。不可能と言っていいかもしれない。ハンジ・フリック監督に対してもまったく無遠慮で、その様子を見ているこちらまでハラハラしてしまう。
 

　ヤマルは、自分自身が認められ尊敬されていると感じると、ボールの有無を問わず、ピッチ上でも誕生日パーティーが行われた田舎の邸宅でも、ダンスパフォーマンスを披露できるステージ上でも、真骨頂を発揮する。フリースタイルとヒップホップは彼の得意分野で、今夏に中国のあるバル・レストランでサプライズ出演した際、即興モノローグで観衆を魅了したことは、その場に居合わせた人なら誰もが知っている。

　ショーマンとしてのセンス、タブーを破ることへの快楽、周囲で起こっていることを察知する能力——。これらが、ヤマルがサッカー界とエンタメ界の両方でスターとして君臨し、老若男女から注目される存在となり、バルサにとって計り知れない価値を持つ資産となった要因だ。

　19番を着用している間はそれでよかった。果たして10番に変更した後もヤマルのようなシナリオから外れた成功をコントロールできるかどうかが今後の焦点となってくる。

文●ラモン・ベサ（エル・パイス紙バルセロナ番）
翻訳●下村正幸

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