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「チームの勝ち負けにこだわる仕事ではない」オランダで活躍する日本人フィジオが“叩き上げの8年間”で辿り着いた境地。「今は自分の裁量で全部できるのが楽しい」【現地取材】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2025年07月12日

「GPSのデータを使ってフィジオの仕事に活かせるのが僕の強み」

エクセルシオールは2年ぶりにエールディビジへの復帰を果たした。(C)Getty Images

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 アマチュアの世界からプロへ。変わったものは何だろうか。

「フルタイムなので、できることの幅が一気に広がります。アマチュアだと3時間という制約があって、練習したらその日は終わり。プロは朝食から始まってミーティングがあり、練習前に身体をアクティベートさせるセッションができる。練習が終わってからも治療することができますし、筋トレもできます。若い選手は成長につながるようなエクストラなセッションをできます。しかしアマチュアだと、選手は仕事をしているので難しい。怪我を予防するためのトレーニングメニューを渡して『やっておけよ』とは言ってたんですが、実際にやってるかどうかチェックはできない。

 アマチュアは特に試合の日は時間との戦いです。フィジオがひとりしかいないので、スタジアムに着いてからアップ開始までの40分、50分で5人の選手を診るとしたら、ひとり8分しかできない。しかしプロだと2、3人フィジオがいるからひとりの選手に15分かけることができます。一方、アマチュアのほうが時間の効率はいいですね」

 ヘルモント・スポルトとの契約を一年延長した中田は、2年目のシーズンはパフォーマンスデータを管理する仕事を担当することになった。シーズン始まって間もない24年10月、中田はエクセルシオールがフィジオを募集しているのを見つける。同じオランダ2部リーグながらヘルモント・スポルトが1部リーグでプレーしたことがないのに対し、エクセルシオールは“ヨーヨークラブ”と呼ぶと聞こえは悪いが、エールディビジでお馴染みの存在だ。さっそく中田が応募してみたところ見事に受かった。こうして11月にヘルモント・スポルトを退団、翌年1月からエクセルシオールに入団した。契約はシーズン終了までの半年間だ。

「エクセルシオールはプロクラブのトップチームで働いた経験を持つフィジオを探してました。ユースチームで働いた経験を持つ候補者はいたそうですが、トップチームの経験者は僕以外にいなかったそうです。また、パフォーマンスコーチの経験を持ち、GPSのデータを使ってフィジオの仕事に活かせるのが僕の強み。そこもエクセルシオールが求めているフィジオにマッチしました。面接では『こういう受傷をした選手のリハビリプランを作成しなさい』というお題をもらって、プレゼンしました」
 
 24-25シーズン、エクセルシオールは2位になり、エールディビジへの自動昇格を果たした。2季ぶりに1部復帰を果たし、ピッチの上で大喜びするスタッフと選手たちの中に、満面笑顔の中田の姿もあった。

「サッカー人として、チームに携わる者として、エールディビジ昇格はもちろん嬉しかったです。ただ、フィジオという立場に戻ると、感覚的にはちょっと違うというか。最終的にはフィジオもチームの勝ち負けに関わってくるんですけれど、そんな影響を及ぼすような職種ではありません。監督が目の試合に勝つことを考えているのに対し、僕らフィジオは選手の今後を含めた判断が必要とされます。

 監督としては試合に出したい選手でも、フィジオとしては負傷の度合いやリハビリの状況を鑑みて『この選手は試合に出せない』という判断をくださないといけなくなる。つまり、フィジオはチームの目の前の勝利に相反することもありえる仕事なんです。サッカーが好きな者として自分が所属するチームがエールディビジでプレーするのは嬉しいこと。しかし、フィジオはチームの勝ち負けにこだわる仕事ではないのかなと思っています」

 クラブには「リンゴ、リンゴ」と話しかけてくるスタッフがいるのだという。

「昔、エクセルシオールでプレーしていた頃の小倉隆史さんと関わった人がクラブにいて、唯一教えてもらった言葉がなぜかリンゴ。『こんにちは』とか他にも教わる日本語があるはずなのに(笑)」
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