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「チームの勝ち負けにこだわる仕事ではない」オランダで活躍する日本人フィジオが“叩き上げの8年間”で辿り着いた境地。「今は自分の裁量で全部できるのが楽しい」【現地取材】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2025年07月12日

「オランダのフィジオセラピストは医者と同等の地位がある」

オランダで充実の一途を辿る中田氏。単身降り立ってから8年の歳月が流れた。写真:中田徹

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 オランダリーグで活躍する日本人は選手だけではない。8月8日に開幕する2025−26シーズンのエールディビジでは、4人ものフィジオ、パフォーマンスコーチが裏方としてチームを支えるのだ。そのひとりがエクセルシオールの中田樹(29歳)だ。

 そのキャリアの始まりはオランダ8部リーグから。オランダで8年かけてエールディビジの舞台に辿り着いた叩き上げのフィジオである。今回は中田のオランダでのキャリアアップを追った。

 中学から立命館で学ぶ中田樹は、高校時代にサッカープレーヤーとしての限界を悟った。

「プロにはなれないのなら、サッカーのトレーナーになろう」

 そう決意して立命館大学スポーツ健康科学部に進学し、その中にあるR-GAT(立命館グローバル・アスレティックトレーニング)の門を叩いた。このプログラムはATC(アメリカのスポーツ・トレーナー国家資格)取得を目標としている。しかし在学中、「アメリカのスポーツ・トレーナーはいろいろなスポーツに携わるので、僕が目ざす“サッカーのトレーナー”とは趣旨が違うな」と中田は気付き、卒業後はサッカーの本場ヨーロッパで資格をとって現地のサッカークラブでは働くことにし、情報収集を兼ねて、ヨーロッパで活躍する日本人フィジオ・トレーナーたちから話を聞いて回った。なかでもしっくり来たのがオランダだった。

「相良浩平さん(スパルタ)や中田貴央さん(ユトレヒト→フェイエノールト)たちから『オランダのフィジオセラピストは医者と同等の地位があり、自分で診断して治療することができる。スポーツ外傷の場合、そのメリットは大きい』と教わり、オランダに行くことを決めました」

 伝手もなく、最初に働くクラブを現地で見つけるのは大変なこと。しかし、中田はあまり苦労することなくオランダのアマチュアクラブに雇われた。

「僕はサッカーが好きなので散歩がてらアマチュアクラブの試合を見て回ってました。ユトレヒトのPVCというクラブで試合を見ていたら、隣のおじさんと世間話になり『僕はサッカーのトレーナーになるため、オランダに来たんです』と説明したら、『俺の隣にいるのがPVCの会長だから』と紹介してくれました。こうして僕はセカンドチームでプレーしながら、トップチームのフィジオになったんです」

 オランダ語学校に一年通い、それからTHIMカレッジに進んでスポーツ・トレーナーの勉強に励みつつ、ロスマーレン(5部リーグ)、ARC(5部リーグ)、ホーフラント(4部リーグ)でフィジオの経験を積んだ。ホーフランデルフェーン(7部)のフィジオとして活躍する頃には、すでに中田はスポーツ・トレーナーの有資格者となっており、クラブから払われる給料はPVCの頃から比べると段違いに膨らんでいた。この間、5年の出来事である。

「これがまさに僕が日本にいた頃から目論んでいたことでした。日本ではフィジオが下積みする現場があまりなく、中間ポジションがない。コネを頼っていきなりトップレベルのクラブ、学校でキャリアをスタートさせる必要があります。いわば運頼みの世界。しかしオランダはコネが無くても、8部リーグ規模のクラブでもフィジオを探しているのでキャリアをスタートさせやすい。だから僕のようにまだ資格のない学生でも有償ボランティアとして、経験を積む場がある。こうして僕は“サッカーのトレーナー”として知識と経験を深めていったんです」
 
 アマチュア時代の中田は「俺はフィジオだけではない。コンディション系トレーニングをすることもできる」と所属クラブでアピールすることで、フィジオに加えてパフォーマンス分野の仕事を任されたり、知識を深める場を設けたりした。

「僕は大学で運動生理学を学びました。アマチュアクラブで5年間もあったので、知識を形に持っていく作業をゆっくりやりました。監督からはああだこうだと言われながら、ちょっとずつパフォーマンスコーチっぽいことをして、“サッカー界の通例”というのを学びました。

 例えばサッカーの現場で筋力テストに使う機械、体力測定で行なうテストを知ってるかどうかが、この世界にいるかどうかの証なんです。クラブ内で議論する際に、監督が知らないテストの話をしても話が進まない。『サッカー現場で使うテスト・機械・メソッドはこれ』という通例をアマチュア時代に学びました」

 このことがプロの世界に入った時に大きく役立った。アマチュア時代の中田はサッカークラブのフィジオを務めながら、クリニックでも働いて一般患者を診ていた。そのクリニックの姉妹店がオランダ2部リーグ、ヘルモント・スポルトと提携していた。ヘルモント・スポルトの「パフォーマンスコーチのできるフィジオを探してます」という求人が、大学で運動生理学を学び、オランダのアマチュアクラブでフィジオとパフォーマンスコーチの経験を積んだ中田のプロフィールと合致した。こうして中田は2023年、パフォーマンス・マネジャーとしてヘルモント・スポルトに入団した。

「ヘルモント・スポルトでの一年目はフィジオとパフォーマンスコーチの仕事が半々でした」
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