日本人選手の獲得は?「ぜひ実現させたい。ただ…」
MVVマーストリヒト(オランダ)は4月1日、公式サイトで「日本人投資家グループ『出島フットボール』がクラブの共同オーナーになることを歓迎します」と発表した。
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日本とオランダを行き来しながら、出島フットボールの陣頭指揮を執るのが代表取締役の利重孝夫氏。CFG(シティ・フットボール・グループ)日本法人代表、横浜F・マリノス エグゼクティブ・アドバイザーなどの経歴を持つフットボール業界を知り尽くした人物だ。オランダ執行責任者としてMVVマーストリヒトに常駐するのは、シント・トロイデン(ベルギー)でCFO(財務責任者)を、デインズでCEO(最高経営責任者)を務めた飯塚晃央氏。また、AZ、オランダソフトボール・野球協会、オランダ五輪委員会などを歴任し、現地で豊富なネットワークを持つジェラルド・スミス氏が、オランダと日本間の調整役として加わる体制となっている。
1956-57シーズンにスタートしたエールディビジのオリジナルメンバーでもあるMVVマーストリヒトだが、21世紀に入ってからは2部リーグ暮らしが続いており、近年は経営が振るわず会社更生法の適用を受けた。そんな小クラブの経営に出島フットボールが参画した狙いと、日本サッカー界に与える影響などを、利重氏と飯塚氏に伺った。
――出島フットボールとMVVマーストリヒトの接点はどうして生まれたのか、そのあらましを教えてください。
利重「3年前にアメリカ系ファンドがMVVマーストリヒトの共同オーナーになり、いずれクラブの全株式を取得する計画だったようですが、突然手を引いてしまった。当てにしていた資金が入らず、MVVマーストリヒトは財政的に困難な状況に陥りました。そこで立ち上がったのが地元の若手起業家・企業家たちで、120年の歴史ある地元サッカークラブを破綻から救うことになりました。
それはそれで大変美しい話ではあったのですが、彼らにはフットボールビジネスの経験がなく、一時的に救済できたとしても、その後の持続的なクラブ経営には不安もあるだろうと想像し、私と旧知のジェラルドとで『我々と組まないか?』と提案したのがきっかけです」
――MVVマーストリヒトはアメリカの投資グループから痛い目に遭ったばかり。利重さんたちに対しても慎重だったのでは?
利重「たしかに彼らも海外投資家に煮え湯を飲まされ注意深くなっている面はありましたが、約1年間じっくり時間を掛けてお互いの理解を深め、共同オーナーとしてクラブの再興を目ざすべくスタートを切ったところです」
――マーストリヒトはいい街ですよね。街とMVVマーストリヒトの関係は?
利重「ヨーロッパでは当たり前の、街に欠かすことができない、社会インフラの一つとして存在しているクラブだと思います。だからこそ今回、志ある青年実業家たちが『120年以上の歴史を持つMVVマーストリヒトが消滅してはならない』と立ち上がった。彼らはそもそも各人が一国一城の主であるアントレプレナー(起業家)集団なので、地元行政との関わり・折衝を中心に大変頼りになる経営パートナーです」
――出島フットボールがオランダ2部リーグのクラブを経営するメリットはなんですか?
利重「オランダリーグは2部と3部の間で事実上昇降格がないシステムになっています。これは経営的な意味合いとして非常に大きい。降格を回避すべく予定外の出費を迫られる心配が無いため、明確な経営ビジョンを立てたうえで、今後クラブの価値を年々積み上げていくことが可能です」
――ということは出島フットボールをオランダで作ったのはこの国ありきのプランだったんですか? それともMVVマーストリヒトの話があったからオランダで作ったのでしょうか?
利重「両方ですね」
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1956-57シーズンにスタートしたエールディビジのオリジナルメンバーでもあるMVVマーストリヒトだが、21世紀に入ってからは2部リーグ暮らしが続いており、近年は経営が振るわず会社更生法の適用を受けた。そんな小クラブの経営に出島フットボールが参画した狙いと、日本サッカー界に与える影響などを、利重氏と飯塚氏に伺った。
――出島フットボールとMVVマーストリヒトの接点はどうして生まれたのか、そのあらましを教えてください。
利重「3年前にアメリカ系ファンドがMVVマーストリヒトの共同オーナーになり、いずれクラブの全株式を取得する計画だったようですが、突然手を引いてしまった。当てにしていた資金が入らず、MVVマーストリヒトは財政的に困難な状況に陥りました。そこで立ち上がったのが地元の若手起業家・企業家たちで、120年の歴史ある地元サッカークラブを破綻から救うことになりました。
それはそれで大変美しい話ではあったのですが、彼らにはフットボールビジネスの経験がなく、一時的に救済できたとしても、その後の持続的なクラブ経営には不安もあるだろうと想像し、私と旧知のジェラルドとで『我々と組まないか?』と提案したのがきっかけです」
――MVVマーストリヒトはアメリカの投資グループから痛い目に遭ったばかり。利重さんたちに対しても慎重だったのでは?
利重「たしかに彼らも海外投資家に煮え湯を飲まされ注意深くなっている面はありましたが、約1年間じっくり時間を掛けてお互いの理解を深め、共同オーナーとしてクラブの再興を目ざすべくスタートを切ったところです」
――マーストリヒトはいい街ですよね。街とMVVマーストリヒトの関係は?
利重「ヨーロッパでは当たり前の、街に欠かすことができない、社会インフラの一つとして存在しているクラブだと思います。だからこそ今回、志ある青年実業家たちが『120年以上の歴史を持つMVVマーストリヒトが消滅してはならない』と立ち上がった。彼らはそもそも各人が一国一城の主であるアントレプレナー(起業家)集団なので、地元行政との関わり・折衝を中心に大変頼りになる経営パートナーです」
――出島フットボールがオランダ2部リーグのクラブを経営するメリットはなんですか?
利重「オランダリーグは2部と3部の間で事実上昇降格がないシステムになっています。これは経営的な意味合いとして非常に大きい。降格を回避すべく予定外の出費を迫られる心配が無いため、明確な経営ビジョンを立てたうえで、今後クラブの価値を年々積み上げていくことが可能です」
――ということは出島フットボールをオランダで作ったのはこの国ありきのプランだったんですか? それともMVVマーストリヒトの話があったからオランダで作ったのでしょうか?
利重「両方ですね」
――今回のプロジェクトで日本人選手を獲るプランは?
利重「クラブからの期待感はとても大きく、せっかく日本とオランダの共同オーナー体制になったわけですから、私もぜひ実現させたいと思っています。ただ、オランダリーグはEU外選手に対してかなりハードルの高い最低年俸規制を設けているので、MVVマーストリヒトの現状予算規模を考慮すると、ここしばらくは日本人選手を獲得することは現実的ではないかもしれません」
――しばらくは日本人選手を獲るのは現実的ではない――。となると、DMM.com社がオーナーを務めるシント・トロイデンが日本人選手をどんどん獲得するモデルと違ったアプローチを出島フットボールは試みるわけですね?
利重「日本人選手がこれだけヨーロッパで活躍できるようになり、日本サッカー全体として次のステップを目ざすなかで、選手だけではなくエコシステム全体で成長していかないといけない、あるいは、そのチャンスが到来したと捉えています。ピッチ上で最後に結果を出すのは監督・選手たちですが、それを実現させるためにはリーグやクラブのマネジメントが必要不可欠であり、優れた経営体制の下で優れた環境、選手が作られ、それを継続させることで高いパフォーマンスが生まれる――。そのことを私は嫌と言うほど見聞きしてきたし、実際にこの身で体験してきました」
――なるほど。選手としてではなく、フロントやテクニカルスタッフとして欧州で挑戦したい若い人もいるでしょう。
利重「日本人選手の長所として、ディシプリン、コレクティブ、ハードワーク、スキルフル、アジャイル(俊敏性/ビジネスでは“タスクをこなす速さ”)といったことが良く取り上げられますが、これって全部、会社やクラブの経営にも通ずる話なんですよ。日本の良さというのが選手だけでなく、テクニカル、事業・経営といったクラブ全般に対して間違いなく通用すると。
今から5年後、10年後、ヨーロッパのどこに行っても日本人オーナーがクラブをしっかり経営し、フロントにも日本人が当たり前の世界になると思っています。その先駆けはMVVマーストリヒトだった――という世界を作れたら嬉しいですね。
Jリーグとそのクラブにとって、国内だけで継続的に事業成長を遂げるためのハードルは年々高くなっています。横浜F・マリノスに出資したCFGは日本で初めての外資ですけれど、今回、レッドブルが大宮アルディージャのオーナーになり、Jクラブもこれからどんどん資本的に開かれていくと思います。そのなかで海外といかに対等に渡り合える人材を育てていけるかが肝心だなと。そのために欧州の現場で機会を創っていくという強い意志を持っています」
利重「クラブからの期待感はとても大きく、せっかく日本とオランダの共同オーナー体制になったわけですから、私もぜひ実現させたいと思っています。ただ、オランダリーグはEU外選手に対してかなりハードルの高い最低年俸規制を設けているので、MVVマーストリヒトの現状予算規模を考慮すると、ここしばらくは日本人選手を獲得することは現実的ではないかもしれません」
――しばらくは日本人選手を獲るのは現実的ではない――。となると、DMM.com社がオーナーを務めるシント・トロイデンが日本人選手をどんどん獲得するモデルと違ったアプローチを出島フットボールは試みるわけですね?
利重「日本人選手がこれだけヨーロッパで活躍できるようになり、日本サッカー全体として次のステップを目ざすなかで、選手だけではなくエコシステム全体で成長していかないといけない、あるいは、そのチャンスが到来したと捉えています。ピッチ上で最後に結果を出すのは監督・選手たちですが、それを実現させるためにはリーグやクラブのマネジメントが必要不可欠であり、優れた経営体制の下で優れた環境、選手が作られ、それを継続させることで高いパフォーマンスが生まれる――。そのことを私は嫌と言うほど見聞きしてきたし、実際にこの身で体験してきました」
――なるほど。選手としてではなく、フロントやテクニカルスタッフとして欧州で挑戦したい若い人もいるでしょう。
利重「日本人選手の長所として、ディシプリン、コレクティブ、ハードワーク、スキルフル、アジャイル(俊敏性/ビジネスでは“タスクをこなす速さ”)といったことが良く取り上げられますが、これって全部、会社やクラブの経営にも通ずる話なんですよ。日本の良さというのが選手だけでなく、テクニカル、事業・経営といったクラブ全般に対して間違いなく通用すると。
今から5年後、10年後、ヨーロッパのどこに行っても日本人オーナーがクラブをしっかり経営し、フロントにも日本人が当たり前の世界になると思っています。その先駆けはMVVマーストリヒトだった――という世界を作れたら嬉しいですね。
Jリーグとそのクラブにとって、国内だけで継続的に事業成長を遂げるためのハードルは年々高くなっています。横浜F・マリノスに出資したCFGは日本で初めての外資ですけれど、今回、レッドブルが大宮アルディージャのオーナーになり、Jクラブもこれからどんどん資本的に開かれていくと思います。そのなかで海外といかに対等に渡り合える人材を育てていけるかが肝心だなと。そのために欧州の現場で機会を創っていくという強い意志を持っています」