アンビバレントな感情が「早くピッチに戻りたくなる」という想いを加速させる。
「いやー悔しいね。嬉しいけど悔しい」
それが中村の偽らざる本音だった。「審判に当たったやつが入っちゃったり、いやな空気があったけど、それを自力で撥ね返したし、力が付いてきた」というチームの底力を感じ、チームの劇的な勝利も素直に嬉しかったはずだ。
しかし一方で、その勝利の輪に自分は加われなかった。その事実が悔しいのだ。「嬉しいけど悔しい」というアンビバレントな感情が、「早くピッチに戻りたくなる」という想いを加速させる。
「やっぱりピッチに立ってこそだから。上(スタンド)にいる選手たちはみんな思っているはず。こんな試合を見せられるとウズウズするよね。ただ間違って(リハビリを)慌てないようにしないと(笑)」
早くピッチに戻りたい。ただ焦りは禁物。両方の気持ちをぐっと呑み込んだ中村は、笑顔で“らしい”ひとことを残し、会場を後にした。
「まぁ頑張ります」
取材・文:大木 勇(サッカーダイジェスト編集部)