しかし欧州シーンの現状を見渡せば、他にも十分に潜在能力を秘めた候補者たちがひしめいている。セルティックの公式戦51試合で33ゴールの前田大然は言うに及ばず、デンマークの名門ブレンビーで12ゴールを挙げ、フライブルクへ移籍した鈴木唯人にもブレイクの可能性が広がる。

　また、オランダでは、いずれも怪我で出場が20試合台に留まったフェイエノールトの上田綺世と、NECの小川航基が７ゴール。さらに小川の同僚で20歳の塩貝健人もデビューシーズンで４得点しており、来シーズンはブレイクの予感が漂う。もちろん久保建英、南野拓実、伊東純也、鎌田大地ら日本代表の常連組も、チームコンディションに恵まれれば、いつ二桁に到達しても不思議ではない。
　
　かつて日本でストライカー不在が声高に指摘されていた頃は、エゴの欠落が問題視されてきた。確かに１、２度シュートをミスしてベンチから怒声が飛ぶと、別の選択へ逃げてしまう多くの日本人選手に対し、助っ人選手たちは何度ミスしても躊躇なくチャレンジする信念が沁みついていた。だが、一見エゴに映ったメンタリティの正体は、おそらく確かな状況判断や技術に裏打ちされた「自信」だったに違いない。

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　象徴的なのが、三笘や鎌田のゴールへの貢献の仕方だ。2020年川崎のルーキーだった三笘は、13ゴール12アシストの記録を残している。あれほど簡単にペナルティエリアを攻略してしまう選手は見たことがなかったが、最後の選択にも誤りがなかったことを示している。

　同じように22-23シーズン、フランクフルト時代の鎌田も公式戦を通して16ゴール７アシスト。いずれにしても仕上げのラストタッチが、判断、技術ともに秀逸だったことを物語っており、それは自己主張が先行する単なるエゴとは明らかに一線を画す。結局、日本サッカー界全体に正しい判断や技術が浸透し研磨され、頂点が押し上げられた結果が４選手の二桁ゴール到達として表れたと言えそうだ。
　
　もちろんゴールというサッカーで究極の結果は、最も判り易いアピールになる。これだけ欧州で多くのスコアラーが活躍するようになれば、間違いなく相乗効果も生まれてくる。そしていつかクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシ並みの怪物が突き抜けてくる日が来れば、その時は「ワールドカップ優勝」の目標も現実味を帯びてくるのかもしれない。

文●加部究（スポーツライター）

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