【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の七十七「突出した個をいかに操るか」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年07月01日

サッカーでは突出した個性が味方を救うことが少なくない。

圧倒的なフィジカルとテクニックでチームを牽引するC・ロナウド。ただ、その言動はたびたび物議を醸している。(C) Getty Images

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 ペドロの発言を受けて、監督のデル・ボスケが混乱を鎮めようと「(そう発言したことを)彼は反省しているから」と語った矢先、本人が「なにも後悔はしていない」と発言。ペドロとポジションを争うノリートが「僕はたとえ控えでも、代表に呼んでもらえるなら構わない」と語ったことで、見えない溝ができた。
 
 ペドロには自負心があったのだろう。要求を口にするだけの仕事をしてきた、ということかもしれない。 悶々とした気持ちを晒すのに逡巡もなかった。
 
 しかし、部下を従えるボスとしては、こうした言動はとても許されない。自負心や虚栄心は容認される部分はあるが、これはメンタルの強さとは言えない。
 
 サッカーは集団戦。その原則を破ってはならない。
 
 中国、漢の時代の名将である韓信は全軍を率いるに際し、軍律十七箇条を記しているが、そこには兵士に対し、集団の規律を乱すことを厳格に罰する旨が並んでいた。
 
「恨み言を多く述べ、自分の将を侮り、教えを乱すこと、これをわがままと呼び、死罪とする」
 
 サッカーは軍隊とは違う。しかし、符合する点は多い。ピッチという戦場において、味方を束ね、敵に一丸となって挑めるか。それは実際の生死が懸かっていないだけの話とも言える。
 
 とはいえ、サッカーでは突出した個性が戦場で味方を救うことが少なくない。そうした選手はしばしば反骨心、反逆心を持っている。リーダーとしては、才覚と心を見極めながら戦うことが肝要となるのだろう。
 
文:小宮良之(スポーツライター)
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡り、ジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。

 
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