【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の七十七「突出した個をいかに操るか」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年07月01日

「僕は人数合わせで代表に来たくはない」。控え扱いに不当を訴えたペドロ。

スペイン代表での扱いに不満の声を上げたペドロ(中央)。チーム内に不穏な空気を生み出す結果に。(C) Getty Images

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 プロのアスリートは、一般人がとても手が届かない運動能力や競技技術を身につけている。天与の才。手放しにそう表現してもいいくらいに、桁外れな場合もある。
 
 しかし、一般人から見たら想定を超えた能力も、プロ同士では紙一重と言える。では、なにが決定的な差となるのか。
 
 そこで要求されるのが、メンタルの部分なのだろう。それは血気盛んに戦いに挑み続ける精神力かもしれない。自分の強さを疑わず、ナルシズムに似た境地で、敵を打ち負かす。雄々しく、勇ましい。ポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウドはこのタイプのメンタルの持ち主だろうか。C・ロナウドは類い希な身体能力とテクニックを持っているが、それを生み出し、支えてきたのは偏屈なまでの虚栄心と言われる。
 
 一方、泰然自若としたプレーでチームを鼓舞し続けられる冷静な心、それもメンタルの強さと言える。ナルシズムとは反対で、実直に堅実にチームのために力を尽くせる。犠牲心とも言えるが、平常心で行動できるタイプか。その筆頭格は、スペイン代表のアンドレス・イニエスタではないだろうか。イニエスタは能面の下にふつふつとした血の滾りを隠し、心を乱さず、創意を凝らせる。
 
 メンタルの強さ。
 
 そう一口に言っても、型にはめることはできない。個性によるものだし、組み合わせも大事だろう。C・ロナウドが11人いたら、まとまるものもまとまらない。
 
 ひとつだけ言えるのは、心の状態というのは落ち込んでいたり、悲観的になってしまったり、威張ったり、そうした不安定は好ましくない。自分を大きく見せても、小さく見せても、周りの信用を失う。
 
 EURO2016では,スペイン代表として60試合近い出場歴を誇るペドロが、控えという扱いに不当を訴えている。
 
「僕は人数合わせで代表に来たくはない。誰かを傷つけるつもりはないけど、プレーしたい。それだけが自分の願いさ」
 
 ペドロの発言は、正論のように聞こえるが、とても危険である。実際、物議を醸すことになった。
 
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