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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の七十四「アルゼンチン流の勝者論と日本人の美点」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年06月10日

アイマールの言葉は日本人として受け入れ難かった。

アイマールは、「勝者のみが学び、成長できる」と著者に語った。メッシ、リケルメも同様の趣旨の発言をしている。(C) SOCCER DIGEST

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 10年ほど前、アルゼンチン代表MFのパブロ・アイマールにインタビューした時のことである。「敗北から学び取ることは?」という筆者の質問に対し、彼の口から出た言葉は、凡そ日本人としては受け入れ難かった。
 
「敗北から学び取る? そんなことあり得ない! 負けた人間がどうやって成長できるんだい? フットボールの世界では、勝った人間だけが学び、成長できるんだよ」
 
 敗者には語る価値もない。勝者のみが生き残れる。それはひとつの流儀だった。「勝者論」というべきだろうか。それはどうやらアルゼンチン流だったようで、リオネル・メッシやファン・ロマン・リケルメなども同じような趣旨の発言をしている。
 
 道徳観は各国でこれほど違うモノなのか、と思い知らされる。
 
「この負けは悔しいですが、今後のいい経験にしたいと思います。自分たちの立ち位置や自分がどこまでやれるか、なにができないのか、ということが分かりました。それを忘れずに練習し、次に生かしたいと思います」
 
 日本人の選手たちは、こうした発言をステレオタイプに語る。おそらくサッカーファンなら、何度も耳にしたことがあるコメントの類だろう。いわば、「敗者論」というべきか。なにもあしざまに言っているのではない。敗北に学ぶべき点がある、と日本人は真剣に信じているのだ。
 
 勝者論と敗者論――。
 
 きっと、そこに正邪はない。文化的背景があるわけで、優劣を語れるものでもないだろう。勝者しか生き残らない、という考え方は、常勝のメンタリティを生む。
 
 しかし、その熾烈さは日本人の人生観に合うか、は疑わしい。こつこつと物事を積み上げ、何度かばらばらに崩れても、そこにロジックを見出し、より良いものに仕上げていく、という努力を怠らない。それは日本人の美点だろう。
 
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