川崎らしくアイデア満載で
吉原と井川はともに現役引退後にサッカー界から一度離れ、自らを磨いてきた。FOB会設立のひとつの背景になったOBの人数の増加は、各々がどんなセカンドキャリアを歩むのかというサッカー界全体の課題にもつながっている。
それこそ監督やコーチの椅子は限られている。一方で他分野に挑むとしても新たな夢を見つけられないと悩む選手も多いのだろう。井川も語る。
「僕は香港で引退して、コーチ業やスポーツビジネスをやってみましたが、サッカーほど情熱を注げなかった現実がありました。そんな時にたまたま不動産業に携わることができ、情熱を注げる仕事に巡り合えた。自分の人生経験の結論としては、好きなものこそ頑張れる。それがモチベーションにつながり、相乗効果になりますから。
自分もそうですが、サッカーしかやってこなかった人は、次の夢を見つけるのは難しい。家族がいればお金も稼がないといけないですからね。でも本当は自分が真にやりたいことはなんなのか、考える時間があったほうが良いと思うんです。言うなればハーフタイムが必要で、試合に例えるなら、前半は選手、後半は別のことをやるとすれば、何をやるか考えられる時間があると良いですよね。やっぱり現役時代はサッカーに集中すべきですから。
引退後のそういう時に例えば、ヨシくん(吉原)の会社や、うちの会社などで社会勉強をしてもらい、今後のことを考えてもらえる時間も取れるかもしれない。そういった関係性や情報交換もできれば良いですよね。
僕も不動産業界に進み、今の社長に面倒をみてもらい、けちょんけちょんにしてもらいながら、ようやく社会人になってきたなという自負があるんです。サッカー選手、井川を捨てられたと言いますか、サッカー界にいるとやっぱり現役時代のプライドを捨てられないですから。
一方で、引退後に上場企業の社長になったのは僕は嵜本(晋輔/元G大阪)しか知らない。そういう環境で、親が子どもをサッカー選手にさせたいかというと、引退後の不安を考えて、やめておけと言うと思うんです。だからこそ、セカンドキャリアで成功したというロールモデルを増やしていかないと親としても心配で仕方ないはず」
それこそ監督やコーチの椅子は限られている。一方で他分野に挑むとしても新たな夢を見つけられないと悩む選手も多いのだろう。井川も語る。
「僕は香港で引退して、コーチ業やスポーツビジネスをやってみましたが、サッカーほど情熱を注げなかった現実がありました。そんな時にたまたま不動産業に携わることができ、情熱を注げる仕事に巡り合えた。自分の人生経験の結論としては、好きなものこそ頑張れる。それがモチベーションにつながり、相乗効果になりますから。
自分もそうですが、サッカーしかやってこなかった人は、次の夢を見つけるのは難しい。家族がいればお金も稼がないといけないですからね。でも本当は自分が真にやりたいことはなんなのか、考える時間があったほうが良いと思うんです。言うなればハーフタイムが必要で、試合に例えるなら、前半は選手、後半は別のことをやるとすれば、何をやるか考えられる時間があると良いですよね。やっぱり現役時代はサッカーに集中すべきですから。
引退後のそういう時に例えば、ヨシくん(吉原)の会社や、うちの会社などで社会勉強をしてもらい、今後のことを考えてもらえる時間も取れるかもしれない。そういった関係性や情報交換もできれば良いですよね。
僕も不動産業界に進み、今の社長に面倒をみてもらい、けちょんけちょんにしてもらいながら、ようやく社会人になってきたなという自負があるんです。サッカー選手、井川を捨てられたと言いますか、サッカー界にいるとやっぱり現役時代のプライドを捨てられないですから。
一方で、引退後に上場企業の社長になったのは僕は嵜本(晋輔/元G大阪)しか知らない。そういう環境で、親が子どもをサッカー選手にさせたいかというと、引退後の不安を考えて、やめておけと言うと思うんです。だからこそ、セカンドキャリアで成功したというロールモデルを増やしていかないと親としても心配で仕方ないはず」
吉原も続ける。
「いるプライドといらないプライドがあって、いらないプライドは捨てなくちゃいけない。正直に言えば自分も現役時代は時間を守れないこともありましたよ。でもそんな自分をぶっ壊すためにサラリーマンをやろうと考えたんです。通勤電車に揉まれ、クタクタになった帰宅電車もラッシュで、世の中の人って本当凄いなと実感しました。
その点ではスポーツで培えるメンタリティは社会でも活きる。サッカー界に残るのもひとつの選択肢ですが、一歩外に踏み出す勇気も必要だと思いますね」
こうした社会で揉まれてきた“元Jリーガー”の経験談は現役選手や、引退をしたばかりの選手にとって貴重だろう。そういう意味でもやはりクラブにとっても“人は財産”だ。そうした彼らが改めてクラブのために働ける“FOB会”は素晴らしい組織に感じられる。
改めてふたりは言葉に力を込める。
「新しい触れ合いの仕方も無限大ですよね。やろうとすればなんでもできると思います」(吉原)
「FOB会として大きくなって利益を出せるようになったら、さっき話に出た“スナックFOB”など飲食店を武蔵小杉などに作り、OB会が経営すればすごく面白いと思うんです。そこで元選手で本当に飲食をやりたい人がいれば、OBのセカンドキャリアもサポートできる。サポーターの方と交流できる場も広がる。メリットが多いですよね」(井川)
OB会はどこのクラブにもある組織だ。ただ、その会をどう運営していくのかは、関わる人たち次第。川崎の“FOB会”からは、ただOBが集まってコミュニケーションをするだけでなく、新たなものを生み出そうとする熱を感じる。
まだ立ち上がったばかりで試行錯誤の段階だ。より周知していかなくてはいけないだろう。作って終わりではなく、誰もが笑顔になれる、クラブの伝統を継承していけるような、その“先”へ。
プロとして過酷な世界を生き抜き、社会人として揉まれてきた吉原、井川を中心とした新たなチャレンジは、フロンターレらしくサポーターの人たちを巻き込み、手を取り合った驚きのあるものになるに違いない。それがフロンターレらしさである。クラブを盛り上げられるのはピッチの中だけではない。皆さんもこれをキッカケに、男たちの第2の挑戦が詰まった“FOB会”の活動に興味をもってみたらいかがだろうか。
(全2回了)
■FOB会情報
2024のJリーグの日にあたる2024年5月15日、川崎フロンターレが川崎市民・地域に愛され、親しまれ、誇りとなるクラブになるよう協力すること、川崎フロンターレを川崎市の文化として定着させ、川崎市民・川崎市を笑顔にし、川崎フロンターレと川崎市のさらなる発展に貢献すること、そして、川崎フロンターレの活動支援や、クラブを通じた社会貢献活動やホームタウン活動、チャリティ活動等に寄与することを目的とし、川崎フロンターレ選手OBによって「FOB会」(KAWASAKI Frontale OB会)として発足。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
「いるプライドといらないプライドがあって、いらないプライドは捨てなくちゃいけない。正直に言えば自分も現役時代は時間を守れないこともありましたよ。でもそんな自分をぶっ壊すためにサラリーマンをやろうと考えたんです。通勤電車に揉まれ、クタクタになった帰宅電車もラッシュで、世の中の人って本当凄いなと実感しました。
その点ではスポーツで培えるメンタリティは社会でも活きる。サッカー界に残るのもひとつの選択肢ですが、一歩外に踏み出す勇気も必要だと思いますね」
こうした社会で揉まれてきた“元Jリーガー”の経験談は現役選手や、引退をしたばかりの選手にとって貴重だろう。そういう意味でもやはりクラブにとっても“人は財産”だ。そうした彼らが改めてクラブのために働ける“FOB会”は素晴らしい組織に感じられる。
改めてふたりは言葉に力を込める。
「新しい触れ合いの仕方も無限大ですよね。やろうとすればなんでもできると思います」(吉原)
「FOB会として大きくなって利益を出せるようになったら、さっき話に出た“スナックFOB”など飲食店を武蔵小杉などに作り、OB会が経営すればすごく面白いと思うんです。そこで元選手で本当に飲食をやりたい人がいれば、OBのセカンドキャリアもサポートできる。サポーターの方と交流できる場も広がる。メリットが多いですよね」(井川)
OB会はどこのクラブにもある組織だ。ただ、その会をどう運営していくのかは、関わる人たち次第。川崎の“FOB会”からは、ただOBが集まってコミュニケーションをするだけでなく、新たなものを生み出そうとする熱を感じる。
まだ立ち上がったばかりで試行錯誤の段階だ。より周知していかなくてはいけないだろう。作って終わりではなく、誰もが笑顔になれる、クラブの伝統を継承していけるような、その“先”へ。
プロとして過酷な世界を生き抜き、社会人として揉まれてきた吉原、井川を中心とした新たなチャレンジは、フロンターレらしくサポーターの人たちを巻き込み、手を取り合った驚きのあるものになるに違いない。それがフロンターレらしさである。クラブを盛り上げられるのはピッチの中だけではない。皆さんもこれをキッカケに、男たちの第2の挑戦が詰まった“FOB会”の活動に興味をもってみたらいかがだろうか。
(全2回了)
■FOB会情報
2024のJリーグの日にあたる2024年5月15日、川崎フロンターレが川崎市民・地域に愛され、親しまれ、誇りとなるクラブになるよう協力すること、川崎フロンターレを川崎市の文化として定着させ、川崎市民・川崎市を笑顔にし、川崎フロンターレと川崎市のさらなる発展に貢献すること、そして、川崎フロンターレの活動支援や、クラブを通じた社会貢献活動やホームタウン活動、チャリティ活動等に寄与することを目的とし、川崎フロンターレ選手OBによって「FOB会」(KAWASAKI Frontale OB会)として発足。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)