今の肩書きは南葛SCのプロモーション部の副部長。

　しかも上司は「パワフルすぎる（笑）」かつて川崎で様々なイベントを実現させてクラブの素地を築いた“あの”天野春果氏だ。昨年限りでプロ14年の歩みにピリオドを打った楠神順平は今、葛飾の人々と触れ合いながら、関東リーグ１部を戦うクラブの魅力を伝えようと、奔走している。

　ピッチで多くの人を魅了する選手であった。その技術力は一学年後輩の乾貴士らが尊敬してやまないほどだった。

　彼のキャリアはすでに広く知られているが、相手の逆を突く意識や技術力を重視する滋賀県のセゾンフットボールクラブで育ち、仲間たちと進学した野洲高校では、高校３年時に全国制覇を達成。表現したスタイルは“セクシーフットボール”として一世を風靡した。

　同志社大を経て加入した川崎、そしてC大阪、鳥栖、清水、山形などで見せた自慢のドリブルやテクニックは多くの人の記憶に刻まれているはずだ。オーストラリアでの挑戦（ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ）も挟みながら、2020年から５シーズンは東京都１部、関東２部、関東１部と歩みを進めてきた南葛SCでプレーしてきた。「キャプテン翼」の世界をモチーフにした、サッカーの楽しさを伝える南葛での所属年数が、キャリアのなかで最も長かったこともなんだか楠神らしい。

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　南葛には自ら選らんで“選手社員”（南葛SCはプロ契約も行なっているが、第２の人生を考えて社員としてノウハウを学べる珍しい制度も取っている）として加わり、営業などの仕事をしながらボールを追ってきた。だからこそ、引退後の生活にもそこまで「違和感がない」のだという。

「いやなんかね、これまでも働いてきたっていうのもありますし、一緒にサッカーをやってきたメンバーと結局会っているので、引退した実感がそこまでないんですよね。逆に気が楽だなって（笑）。オフシーズンでも、今まではずっとサッカーのことが頭の中にあったけど、今はもうそれがないので、何食べてもいいし、何飲んでもいい。開放感はやっぱありますね（笑）」

　そう言って、いたずらっぽく笑うのもなんとも彼らしい。

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