ロシアンフーリガン暴動の嘘と真実――ロシアは危険なのか?

カテゴリ:国際大会

篠崎直也

2016年06月26日

物々しくも頼もしい警備体制と、のんびりと楽しむ人々たち。

軍隊や警察の存在がどこにでも感じられるロシアは、むしろ他国よりも安全であるという見方もある。快適かどうかは別の話だが……。 (C) Getty Images

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 彼らは現在も、忠誠を誓うクラブを応援しに試合へと通うが、ウルトラスがチャントやコレオグラフィーを先導し、教育の行き届いたスチュワードが爽やかに観客に接するようになった現在の「緩い」スタジアムに、フーリガンの居場所はない。
 
「自分たちより強い相手を求める」彼らの活動は、次第にダービーや国際大会といった「晴れ舞台」に限定されていったのである。
 
 とはいえ、今大会の暴動が全て彼らの仕業かといえば、それも疑わしい。奇襲やイスやビンを投げつける行為、スタジアム内での乱闘は、彼らの流儀に反するのである。
 
 彼らはあくまで、最初の火付け役だったのかもしれない。あまり報道されてはいないが、イングランド・サポーターによる挑発・侮辱行為も多々確認されており、それに怒ったロシア側の一般的なウルトラスのメンバーが暴動に参加してしまった可能性もある。
 
 欧米からの政治的・経済的制裁やメディアによる攻撃によって、ロシアではかつてないほど愛国心が高まっていることも暴走の一因となっているだろう。
 
 2年後のワールドカップへ向けて、フーリガンの存在は懸念されるが、ロシア国内の治安対策はFIFAの視察団からもお墨付きを得ている。
 
 確かに、警官が隙間なく並んで壁を作るピリピリとした雰囲気は、西欧の都市やスタジアムにはなく、その物々しさは頼もしくもある。ムトコ・スポーツ相がフランスの警備体制の甘さを指摘したのは、こうしたロシアの日常を考えれば納得できる。
 
 それが、サッカー観戦の理想的な場とは言えないかもしれないが、ロシアでは子どもや女性もスタジアムを楽しみ、意外とのんびりとしているのである。
 
 緊張と弛緩が同居する稀有な空間を体験することも、2年後のロシア・ワールドカップの醍醐味となりそうだ。
 
文:篠崎 直也
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