【連載】川口能活クロニクル――シャーアラムの死闘は人生を左右する戦いだった

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年06月25日

出場権を懸けたサウジ戦の終盤はただただ苦しかった。

サウジアラビア戦の終盤は防戦一方ながら、川口を中心とした堅い守りで得点を許さず、28年ぶりの五輪出場を勝ち取った。(C) SOCCER DIGEST

画像を見る

■心強かったゾノさんの存在
 
 準決勝の相手であるサウジは、アジア最終予選のなかで最強チームと謳われていました。フィジカルもあってテクニックもある。システムも4-4-2を採用していて、まさにブラジルのようなチームでした。
 
 しかし、僕たちはチャレンジャーでしたから、失うものはありませんでしたし、逆に、3位決定戦のこともまったく考えていませんでした。僕たちは、相手が強ければ強いほど燃えるチームでしたから、「この試合で決める!」と言っていました。相手が“アジア最強”のサウジで良かったのかもしれません。
 
 中1日のスケジュールのなか、グループリーグを2勝1分の成績を収めて首位突破しました。サウジアラビア戦を含めると、9日間で4試合。いまでは考えられない過酷な日程でしたが、当時のアジア予選はセントラル開催が多かったですから、苦しいのが当たり前のような感じで戦っていました。
 
 このチームにはゾノ(前園真聖)さんがいたので心強かった。キャプテンとしてプレーで引っ張ってくれたのですが、唯一A代表にも選ばれていた選手でしたから、プレーに説得力がありました。五輪代表チームのなかに代表レベルの選手がいたので、自然とチームのレベルも引き上げられていました。
 
 実際、このチームの中心はゾノさんでした。サウジ戦でも、そのゾノさんが先制点を奪って1-0で前半を折り返し、さらに後半に入って57分に追加点を奪ったのもゾノさんでしたから。
 
■時計の針を進めることしか考えなかった
 
 2点のリードを奪うことに成功して、僕自身、「よし、このままでいける!」と心の中で叫んでいました。ただ、それからのサウジの反撃が想像以上に激しかった。暑さと疲労で、選手たちの足が止まってきて、前線へのパスが通らなくなって……。逆にサウジのフィジカルが上回ってきて、あの時はただただ苦しかったことしか覚えていません。
 
 ちょうど、僕が立っているゴールマウスからは、スタジアムの掲示板が見えていたのですが、時計の針がまったく進まない。そう錯覚していたのですが、1点差に詰め寄られたあとは、「早く終わってくれ!」と心の中でずっと叫びました。
 
 ゾノさんもCKの場面でキックモーションに入って足を取られて転倒して時間を稼いでくれたり、僕を含め、みんながとにかく時計の針を進めることしか考えていませんでした。そして、サウジの猛攻をなんとか耐え抜いて、タイムアップの笛を迎えたのでした。
 
【関連記事】
【藤田俊哉の目】自動昇格枠がひとつだけのオランダ。プレーオフの厳しい現実を突きつけられた
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の七十六「落とし所を考えたOA招集で得られるもの、失うもの」
【指揮官コラム】カターレ富山監督 三浦泰年の『情熱地泰』|ONとOFFの使い分けが重要だ
【セルジオ越後】山口蛍の移籍は、ビジネス的に大失敗。「ドイツ短期留学」だったね
【中村憲剛の欧州サッカー観戦記】EURO2016の注目ポイントと楽しみ方!

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ