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新シーズンへ中村憲剛が“FRO”として契約更新した理由。重視した変革期を迎えたフロンターレへの想い【コラム/蹴球賢語】

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年02月20日

年明けからの1か月で学んだのは

同い歳でかつて川崎を支えたふたり。森勇介(写真右)は今季から川崎U-18の監督を務める。(C)J.LEAGUE

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 Jリーグも誕生から30年が過ぎ、クラブ数は60になりました。クラブを発展させていくために、アカデミーの重要性はどのチームでも高まっています。そのなかで、トップとアカデミーのスタイルがリンクしていないのは、良い状況とは言えません。
 
 ある意味、フロンターレは独特なスタイルを築いてきました。一方で、そういったトップチームの特殊性は時代によって変わります。実際にシゲさんがトップチームに就任されて、新たな変化も生まれています。そのトップのメソッドを、ヤスさん、佐原さんが抜けたアカデミーと共有するために誰がその役割を担うべきなのか。両者間の連係をスムーズに図るためにも、自分がFROの役割を変更すればそれができるのではないかいう結論に至ったわけです。
 
 ですので、自分のことというよりも、これまで育ててもらったフロンターレ全体のことを考え、今年はトップとアカデミーをみなさんとともに支える1年にしたいと考えました。本来、僕のそうした決断を大声で言う必要はありません。ただ、2025年の所信表明ではないですが、中村憲剛がこの1年をどう活動しようとしているのか、これまで支えてくださった方々にお伝えする機会がなかったため、今回は引退後からずっと書かせていただいているダイジェストさんのコラムで想いをお伝えする機会をいただきました。
 
 自分の想いはただひとつ。クラブが良い方向に進んでもらいたい、それだけです。みんながフロンターレで幸せになってくれればこれほど嬉しいことはありません。
 
 そうしたなかで、この1か月、活動をさせてもらいましたが、トップチームのキャンプにも少しの間帯同させてもらうなど、個人的にも濃い経験を積ませてもらっています。
 
 オニさんもそうでしたが、シゲさんも話をしてくれる方で、監督としての経験談などを伝えていただいています。トレーニング内容やマネジメントの方法、言葉の伝え方など学ぶことばかりなので、本当に感謝しかありません。そして現役時代含めて、これまで中大の先輩が同じチームにいなかったということもありますが、“中大あるある”を話せたのもかなり貴重で嬉しかった時間でした(笑)。
 
 今期のトップチームのスタッフには、先ほど話した通り、現役時代やアカデミーの指導でともに時間を過ごしたヤスさん、佐原さん、勇樹に加え、S級の同期で日本代表でも共にプレーし、サッカー観が非常に合うオグリ(大黒将志)もいます。さらに福岡からシゲさんとともに川崎に来た中嶋(円野)コーチや樋口(創太郎)コンディショニングコーチもありがたいことに色々と共有させてもらってますし、トモさん(石野智顕GKコーチ)含め、サッカーの話をたくさんできる最高の環境です。
 
 またU-18はこちらも話した通り(森)勇介が監督になり、イナ(稲本潤一)さんもコーチとして加わりました。
 
 勇介は同じ指導者としてとても勉強になることが多く、接していてひとりでも多くプロになれる選手を育てたいという熱い想いが伝わってきます。そして、フロンターレのOBとして「フロンターレとは」も含め指導論など伝える内容もすごく共感できます。
 
 そのなかで僕は、勇介やコーチングスタッフのみなさんとコミュニケーションを取りながら目指す方向性を共有し、選手にアドバイスをするべきところではアドバイスし、トレーニングではフリーマンのような形で一緒にボールを蹴らせてもらって、フロンターレの選手として必要だと思う“基準”を伝えたいと思っています。一緒にボールを蹴ることで何か感じ取ってもらえたらと思っています。
 
 そして最後になりますが、Jリーグの特任理事として今年のJリーグの話も少しさせてください。
 
 ノノさん(野々村芳和チェアマン)も話しているように、2025年のJリーグはアクチュアルプレーイングタイム(サッカーの試合の中で実際にプレーが動いている時間)の重要性を強調しています。
 
 背景には様々な理由がありますが、セットプレーに時間がかかりすぎる、ファウルが続いて試合がぶつ切りになってしまうなど、観客の方々が試合に集中しにくい環境がピッチの上で生まれつつあります。実際にプレミアリーグと比べれば、Jリーグのアクチュアルプレーイングタイムは6分近く短いというデータも出ています。

 そういう意味では選手はよりタフに戦うことを求められるシーズンになります。ただその一方で、試合の最終盤で勝っているチームが時間をかけるべき場面もマリーシアという言葉が正しいかどうかは分かりませんが、当然出てくると思います。なので、審判の方々の目利きも重要で、上手く試合を進めながら、悪質なファウルには毅然とした対応をしなくてはいけません。

 アクチュアルプレーイングタイムを伸ばすには難しい面も多々ありますが、選手・スタッフ・審判・ファン・サポーター、スタジアムにいるすべての人たちで意識を共有し高めることで、タフで魅力のあるJリーグにしていけたらと思います。

 トレンドで言うと、最近はインテンシティやアグレッシブさが売りのチームが上位にくる傾向にありますが、今シーズンは同じインテンシティ・アグレッシブさを纏ったうえで、技術や立ち位置、戦術、システムで上回るチームが再び現われ、両スタイルが鎬を削り高め合っていく構図にも個人的には期待しています。
 
 何より海外移籍が増えている昨今、大事になってくるのは「クラブの哲学」だと感じます。どんなスタイルを目指し突き詰めるのか、どんなアイデンティティを示すのか。それこそ、監督や選手など人が変われども貫き続ける志があるのか。それが各クラブに問われる時代だと思います。
 
 新しいフェーズに入っていくなか、オグリが川崎のコーチ、玉ちゃん(玉田圭司)が名古屋のコーチ、岩政(大樹)が札幌の監督と、同世代が現場で活躍しているのも大きな刺激になります。彼らと切磋琢磨しながら日本のサッカーを盛り上げていければと思います。改めまして、皆さん、本年もよろしくお願いいたします。
 
構成●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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