リカルド監督は「チーム全体の20％ほどが、私が過去に指導した選手たち。もちろん彼らの存在というのはチームの準備を進めていくうえで、ポジティブに働いたことは間違いない」と認める。

　その一方で、彼の指導を経験していなかった柏の既存メンバーはもちろん、新加入選手も「私とともに、我々が目ざしたいプレースタイルをしっかりと理解しようとしてくれている」と主張した。実際、徳島時代の教え子である垣田も「特に自分が何か言わなくても、監督が直接選手たちに伝えている」と語る。

　浦和時代に、リカルド監督の申し子のような存在だった小泉も、当初は周りの選手たちに指揮官の戦術を伝える役割を果たすつもりでいた。しかし、いざチームが始動すると「なんかあんまり要らなかったんだろうなって。選手全員の理解度や理解力が高いのか、受け入れる素養があるのか。その両方かもしれないですけど、リカルドでやってる選手たちがああだこうだ全然言わずとも、みんなが理解しようとして前向きに取り組んでいる」と感じるという。

　選手たちがリカルド監督のサッカーを理解し、吸収しようという意識の高さもさることながら、このサッカーに特長がマッチした選手を補強している効果もあるはずだ。たとえばサガン鳥栖から加入した原田亘は３バックの右で、まるで水を得た魚のようにビルドアップ、インナーラップ、カバーリングなど、攻守に存在感あるプレーを見せていたが、小泉は「亘とかは本当そうですね」と同意した。
 

　もちろん、恒例のタイトル戦といってもリーグ戦を控えたプレシーズンであり、開幕戦であたるアビスパ福岡をはじめ、J１のライバルはしっかりと柏を研究して、厳しい対応をしてくるだろう。

　柏はキャンプで非公開の練習試合を続けてきたこともあり、この千葉戦は昨シーズンの最終節まで残留争いをしていた柏の変革をライバルに意識づける試合になったはず。そのうえで、このスタイルを継続しながら長い戦いで、常に相手を上回って勝点を積み上げるのは簡単なことではない。

　それでも“今シーズンの柏は面白い”と印象付ける試合になったことは間違い。「その期待感を開幕のスタートから良い方向に繋げられればいいかなと思います」と小泉。2025シーズンの柏が、リカルド監督とどんな戦いをしていくのか。気鋭の新指揮官とともに、柏から世界を目ざす“太陽王”の新章がスタートした。

取材・文●河治良幸

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