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過去最多の観客動員を記録、選手権はなぜこれほど注目されるのか? 再び高体連に“人材”が集まる傾向。ユース年代の未来を考える

カテゴリ:高校・ユース・その他

加部 究

2025年01月19日

大卒ルーキーの数が増加。ただ決して手放しで喜べることではない

三笘ら大学を経由して海外で成功を果たす選手が増えてきている。(C)Getty Images

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 日本サッカーの歴史を振り返っても、代表チームの最大の供給源であり続けたのは高体連だった。

 日本はJリーグが開幕して5年目にワールドカップ初出場を果たすのだが、この時の代表はブラジル育ちの呂比須ワグナーを除けば全員が高体連出身者で、うち半数を超える11人(当時登録は22名)が大学に進んでいた。

 その後、2014年ブラジル大会以降は、高体連とユース出身者の数が拮抗(大学出身者を除く)するようになり、ようやくユース出身者が高体連出身者の数を超えたのは3年前のカタール大会が初めてだった。またカタール大会で目立ったのは大学出身者の急増で、登録メンバーが26人に増えた影響もあるが、初出場時に迫り9人が選出された。

 Jリーグ開幕当初は、大成するには早くプロになるべきだという考え方が大勢を占めた。
実際90年代後半から21世紀初頭の旗頭だった中田英寿、黄金世代を象徴する小野伸二、稲本潤一、高原直泰、2010年代に軸を成した香川真司、本田圭佑、吉田麻也、長谷部誠、そして最近では久保建英など各年代を代表した選手たちの例を見れば、それが必ずしも的外れではないことが判る。

 しかし反面、高校を卒業してから4年間継続的に公式戦をこなす大学生が、18歳でプロになった選手たちを追い越していくケースが目立ち始めると、明らかに風向きは変わった。おそらく長友佑都、三笘、守田英正らが、大学を経てビッグクラブまで上り詰めていくサクセスストーリーも、その流れを加速させたに違いない。

 2010年には大卒ルーキーの数が高体連とユース経由のプロ契約選手の合計を上回り、近年は着実に格差が広がり、とうとう昨年は前者が後者のほぼ倍になった。
 
 ただし、現在の高学歴選手たちの高齢プロデビュー傾向は、決して手放しで喜べることではない。プロの活動期間が削られれば必然的に可能性も狭まるし、J3まで広がるサッカー選手たちの貧困が深刻化して夢が萎めば、現実を見た子供たちやその親から早晩敬遠されてしまう可能性もある。

 さすがにJリーグも遅ればせながら、2026年夏スタートをメドにU-21リーグの新設を検討し始めた。これまで長い間Jクラブは、18歳の選手たちをプロの競争社会に放り込んだまま静観してきたわけだが、実は育成の仕上げにかかるそこからの3年間こそが、最も実戦を栄養に出来る時期になる。それは奇しくも、自立して心身が磨かれプロの即戦力に変貌していく大学生の成長が証明している。

 U-21リーグは、Jリーグにとって避けては通れない道だが、大学の価値が確立された今では遅きに失した感も否めない。社会的構造に鑑みても、大学志向の流れが一朝一夕で変わるとも思えず、しばらく人材確保で苦戦を強いられるのは後発のJクラブの方だろう。

 全国高校選手権は、プロのない時代にサッカー少年たちの重要なモチベーションの役割を果たした。そしてプロが出来てからは、選手生活の重要な岐路に立つ高校生たちが燃焼し尽くす場として、ファンの琴線を揺さぶり続けた。

 だが今後は日本サッカー界独特の発展スタイルを強みにしていくためにも、新しい風物詩が必要かもしれない。もしU-22世代の日本一を決める選手権が誕生し、プロアマを問わずJクラブと大学が覇を競い、そこに欧州のスカウトたちが押し寄せる――。そんな光景が定着する日が来たなら、きっと世界との距離も一層縮まっているはずである。

文●加部究(スポーツライター)

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