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“最後の砦”稲本潤一の引退で1つの時代が終焉。眩い輝きを放った「黄金世代」が日本サッカー界にもたらしたもの

カテゴリ:Jリーグ

元川悦子

2024年12月06日

貪欲さ、強い向上心、負けじ魂、高い競争意識

12月4日に引退会見を実施した稲本。今後は指導者を目ざすという。写真:元川悦子

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 その後、大怪我に見舞われ、プレミアでの本格的なブレイクは叶わなかったが、彼は海外4か国7クラブでプレー。イングランド、トルコ、ドイツ、フランスを渡り歩いたのである。

 稲本が切り開いたアーセナル行きの道を、宮市亮、浅野拓磨、冨安健洋が引き継いだ。さらには香川真司や吉田麻也、岡崎慎司らが他クラブで存在価値を知らしめた。その積み重ねが現在につながり、プレミア大量移籍時代が現実のものとなった。先駆者である稲本のチャレンジは、20年という月日を経て実を結んだのである。

「2002年にトルシエが『もっと欧州に行く日本人選手が増えないと日本は強くならない』と言っていたけど、今は欧州へ行かないと代表になれない時代になっている。世界のトップトップの選手と日常的にプレーすることはすごく大事。だからこそ、どんどん強くなっていると思う」と、稲本は引退会見の場で神妙な面持ちで語っていた。

 確かに23年前の彼もティエリ・アンリ、パトリック・ヴィエラ、ロベール・ピレスら最高峰プレーヤーと同じピッチで自己研鑽に励んでいた。「Jリーグにいるよりレベルが高い」とも口癖のように言っていたし、それが当たり前になることを心から願っていた。

 当時はインターネットもほとんど普及しておらず、代理人や個人トレーナー、食事サポートといった専門的なスタッフも少なく、選手はタフでないと異国ではやっていけなかった。

 2006年夏から1年間、イタリアのメッシーナでプレーした小笠原も、全く英語が通じないなか、必死でイタリア語の単語を覚え、コミュニケーションを取っていた。1シーズンで監督が4~5人代わるという異常事態に直面しながらも、彼なりに必死にもがいたという。
 
 そういった貪欲さと向上心の強さは、黄金世代全員に共通している点。彼らの負けじ魂と競争意識の高さは、スマートな選手が増えた印象の今の日本サッカー界ではあまり見られない部分かもしれない。我々のような昭和の人間からすると、熱くバチバチとぶつかり合うような彼らの世代が懐かしい。

 そんな意味でも、1つの時代に終止符が打たれたことは寂しい限り。稲本ら黄金世代の面々には、セカンドキャリアで華々しい活躍を期待したいところ。高原がクラブ経営、中田が強化部、播戸竜二が会社経営やマネジメントと多彩な人生を進んでいる彼らだが、稲本自身は指導者を目ざすという。

 今年から一足先に同じ道を歩んでいる遠藤、選手兼任でJFA公認Proライセンス講習を受けた永井雄一郎らといつの日か監督対戦が見られるかもしれない。それを楽しみに待ちたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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