【CL決勝コラム】シメオネとアトレティコの冒険の“続き”を、誰もが見たがっている

カテゴリ:ワールド

豊福晋

2016年05月30日

近年のアトレティコの躍進は、すべてこの男ありきだった。

シメオネは毎年のように主力を引き抜かれながらも、若手を鍛え上げて競争力を保ってきた。卓越した指導力を誇る。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 シメオネとクラブの契約は2020年まで残っている。本当にショックのあまりに出た発言なのかもしれない。来シーズンへ向けての大型補強をプッシュするための、クラブ幹部へ向けた戦略的発言かもしれない。『エル・パイス』紙によると、すでに1月から今夏の補強計画を進めているという。
 
 アトレティコを愛する者はそうであってほしいと願い、今では3度目の挑戦に気持ちを切り替えている。
 
 2014年は届かなかった。今回もだ。しかし今回の決勝、内容ではアトレティコが圧倒的に上回っていた。決着はPK戦。着実に、戴冠に近づいている。
 
 しかし、シメオネ抜きに、3度目のチャンスは考えられないだろう。結局のところ、近年のアトレティコの躍進は、すべてこの男ありきだったからだ。
 
 毎年、活躍した主力が他クラブへ引き抜かれていった。ラダメル・ファルカオも、ジエゴ・コスタも、アルダ・トゥランも。シメオネはそれをどうにか補充してはさらに鍛えあげ、再びチームを押し上げてきた。
 
 チームにはサイクルというものがある。ある一定の黄金期を終えたチームに待っているは、緩やかな衰退だ。バルセロナも一時期それに直面し、スペイン代表もそうだった。
 
 しかし、アトレティコは違う。
 
 ガビが見せた決勝でのパフォーマンスは圧巻で、彼がスペイン代表にかすりもしないというこの国の中盤の充実をあらためて示した。
 
 コケはまだまだ成長するだろう。サウール・ニゲスの伸びしろはカスティーリャの大地みたいに広大だ。アントワーヌ・グリエーズマンは世界的スターへの最後の階段に片足をかけている。大げさなシミュレーションをしない優れたCBも、若く有能なGKもいる。
 
 誰もが、このチームがさらに成長するところを見たがっている。彼らとシメオネの冒険は、ミラノでは終わらないのだ。
 
 ひとときの失望に涙したサポーターも、夏の休暇が終わる頃にはまた顔をあげて、チームに声を送るだろう。
 
 決勝の試合中、僕は記者席からシメオネの後ろ姿をずっと追っていた。
 
 南のゴール裏に陣取ったアトレティコ・サポーターが最も沸いた瞬間があった。それは試合中、シメオネが狂ったみたいに赤いゴール裏に走り、サポーターの前で何度も腕を振り上げ、彼らの声を求めた瞬間だった。
 
現地取材・文:豊福晋
 
【著者プロフィール】
豊福晋/1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
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