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危険な暑さが続く日本。最優先で環境整備に着手すべきは育成年代。大人たちはサッカー少年に夏休みを返す時が来ている

カテゴリ:高校・ユース・その他

加部 究

2024年08月11日

世界中がバカンスに入る過酷な夏に、日本の子どもたちだけは炎天下で身体を擦り減らし続ける

プレシーズンツアーで来日した多くの選手が「暑さ」への驚きを口にする。(C)SOCCER DIGEST

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 ちなみにワールドカップで炎天下での試合が続き、最も不評を買ったのが、1994年米国大会だった。欧州の放送時間を優先して現地では日中開催になったため、ダラスでグループリーグを戦ったドイツの選手たちなどはダウン寸前。自分の横を通過するボールに足を出すのも辛そうな選手が目立った。
 
 サッカー界は欧州を軸に回っている。だから必然的に、欧州シーズンの気候に合わせて戦術も練られトレンドも生まれていく。逆に高温多湿状況が3か月以上も続くJリーグが、トレンドから乖離していくのも当然だ。

 今まで日本は技術では劣らないというのが定説だったわけだが、来日した欧州のクラブと比べてしまうと、厳しいプレスを回避してボールを繋ぐ技術は明らかに見劣りした。結局酷暑の中では、プレスの強度にも限界があるので、ビルドアップの対応力も比例してしまうわけだ。

 それでも国内でJリーグは真っ先に秋春制に踏み切り、辛うじてプロ選手だけが最も暑い時期にオフを確保した。しかし本来、最優先で環境整備に着手するべきなのは、大人よりも育成年代である。夏に大会を詰め込めば、部活もクラブもそこに合わせてトレーニングを組み込む。つまり世界中がバカンスに入る過酷な夏に、日本の子どもたちだけは炎天下で身体を擦り減らし続ける。その結果、「夏休みを取る選手と取らない選手では、身体の成長度合いがまるで違う」という声も出ている。
 
 パリ五輪で日本の選手たちからは「厳しい練習に耐えてきた自分を信じて」という言葉が溢れた。確かにそれが不可欠の競技もあるだろう。だがそもそも子どもたちは、なぜサッカーを選ぶのだろうか。楽しくて気がつけばつい限界を超えて走ってしまう。そんな麻薬的な吸引力こそがサッカーの魅力だ。
 
 もちろん、いつかプロなどハイレベルに到達すれば、楽しいだけでは乗り越えられない壁にもぶつかるかもしれない。しかし育成段階の選手たちにとって「過酷な鍛錬」や「理不尽との葛藤」が、「夢中」に勝ることはない。夢中になれる選手たちこそが、創意工夫を凝らし自ら羽ばたいていく。そしてオンシーズンに再び夢中を取り戻すには、夏に心身をリフレッシュさせることが重要なカギになる。
 
 温暖化は加速している。一方で中学高校年代には既に、高円宮杯という全国大会が用意されている。そろそろ大人たちには、日本のサッカー少年に夏休みを返してあげる英断を下すべき時が来ている。

文●加部究(スポーツライター)

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