赤字は膨れ上がり、欧州への道も遠ざかり…あまりに悲惨な現実。

試合ごとに立場も評価もコロコロ変わる――。そんなミランでのプレーは来シーズンも続くのか。凋落の名門の立て直し、欧州カップ出場……彼がどこに重きを置くかが気になるところだ。 (C) Getty Images
とにかく、ミランはどこもかしこも混乱している。
株式譲渡においては、フィニンベストと中国人コンソーシアムが腹の探り合いの真っ最中である。一応、話は進んではいるが、最後はベルルスコーニの決裁を仰がねばならず、その意思はまだ固まっていないという。
なぜなら、ここ30年で最もひどい時期である今、株の過半数を売るということは、敗者としてクラブを去ることとなるからだ。ベルルスコーニとってそれは、一番耐え難いことなのである。
つまり、交渉を重ねてやっと話がまとまったとしても、ベルルスコーニの鶴の一声で全てが白紙になってしまうことも大いにありうるわけだ。
こんな状況だけに、少し前に開かれたミランの株主総会は荒れに荒れた。
少額の株主(0.07パーセント以下の株主)は、ガッリアーニ――もうひとりのCEOバルバラ・ベルルスコーニは総会には欠席し、これがまた株主たちの怒りを増幅させた――に質問の集中砲火を浴びせた。
際限ない利益の低下にどんな戦略を持って対処しているのか? この財政難を乗り越える対処法はあるのか? その責任は誰にあるのか? なぜ、次々と監督をすげ替えるのか?
さらには、カーサ・ミランの建設費用について、年間パス購入者の激減とサン・シーロでの入場料収入について、新スタジアム建設計画の頓挫による建設予定地をめぐる係争の進み具合について……等、多岐にわたる質問は30分以上続いた。
そして最後にある株主は、ガッリアーニに向かってこう言った。
「私はあなたの辞任を待っています」
また、他の株主は今のミランの状況をこう言い表わした。
「もう笑うこともできない、タチの悪い冗談のようだ」
これが、ミランの現実だ。
今シーズンのクラブの赤字は、8930万ユーロ(昨シーズンとほぼ同額)に上る。そしてチームは、フロジノーネ戦に引き分けたことで、ヨーロッパリーグ出場権を得られる6位の座を、サッスオーロに明け渡してしまった。
もし、このままリーグを終えれば、来シーズン、欧州の舞台に立つためには、コッパ・イタリアの決勝でユベントスを破るしかない。しかし、現状でそれは、到底不可能なことである。
そして、ヨーロッパリーグ出場を逃した場合、本田圭佑も自分の未来を本気で考えなくてはならないだろう。
ガッリアーニは相変わらず本田を甘い言葉で誉めそやし、ブロッキもその貢献度の高さを認めている。ただ、この2試合で本田がスタメンに入れたのは、ジャコモ・ボナベントゥーラが怪我で欠場したからにすぎない。
ここ数年同様、悪夢のようだった今シーズンも、あと3試合で終わる。そうしたら全ての選手は自分の周りをよく見回し、今後の身の振り方を考える必要がある。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
株式譲渡においては、フィニンベストと中国人コンソーシアムが腹の探り合いの真っ最中である。一応、話は進んではいるが、最後はベルルスコーニの決裁を仰がねばならず、その意思はまだ固まっていないという。
なぜなら、ここ30年で最もひどい時期である今、株の過半数を売るということは、敗者としてクラブを去ることとなるからだ。ベルルスコーニとってそれは、一番耐え難いことなのである。
つまり、交渉を重ねてやっと話がまとまったとしても、ベルルスコーニの鶴の一声で全てが白紙になってしまうことも大いにありうるわけだ。
こんな状況だけに、少し前に開かれたミランの株主総会は荒れに荒れた。
少額の株主(0.07パーセント以下の株主)は、ガッリアーニ――もうひとりのCEOバルバラ・ベルルスコーニは総会には欠席し、これがまた株主たちの怒りを増幅させた――に質問の集中砲火を浴びせた。
際限ない利益の低下にどんな戦略を持って対処しているのか? この財政難を乗り越える対処法はあるのか? その責任は誰にあるのか? なぜ、次々と監督をすげ替えるのか?
さらには、カーサ・ミランの建設費用について、年間パス購入者の激減とサン・シーロでの入場料収入について、新スタジアム建設計画の頓挫による建設予定地をめぐる係争の進み具合について……等、多岐にわたる質問は30分以上続いた。
そして最後にある株主は、ガッリアーニに向かってこう言った。
「私はあなたの辞任を待っています」
また、他の株主は今のミランの状況をこう言い表わした。
「もう笑うこともできない、タチの悪い冗談のようだ」
これが、ミランの現実だ。
今シーズンのクラブの赤字は、8930万ユーロ(昨シーズンとほぼ同額)に上る。そしてチームは、フロジノーネ戦に引き分けたことで、ヨーロッパリーグ出場権を得られる6位の座を、サッスオーロに明け渡してしまった。
もし、このままリーグを終えれば、来シーズン、欧州の舞台に立つためには、コッパ・イタリアの決勝でユベントスを破るしかない。しかし、現状でそれは、到底不可能なことである。
そして、ヨーロッパリーグ出場を逃した場合、本田圭佑も自分の未来を本気で考えなくてはならないだろう。
ガッリアーニは相変わらず本田を甘い言葉で誉めそやし、ブロッキもその貢献度の高さを認めている。ただ、この2試合で本田がスタメンに入れたのは、ジャコモ・ボナベントゥーラが怪我で欠場したからにすぎない。
ここ数年同様、悪夢のようだった今シーズンも、あと3試合で終わる。そうしたら全ての選手は自分の周りをよく見回し、今後の身の振り方を考える必要がある。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。