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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の六十七「バルサの連敗を引き起こした“勝利の麻薬”」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年04月18日

勝利に囚われず、消耗を抑え、心身のバランスを保つことが重要。

4月に入り、MSNの得点は、スアレスが2点、メッシが1点。疲労が世界一の3トップの力を半減させ、彼らの不調がバルサから強さを奪った。 (C) Getty Images

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 そして3月の南米予選で、バルサの牽引役だったMSNにも疲労の影響が一気に出てしまった。南米から戻ったリオネル・メッシやネイマールが、まるで別人のように生気を失ったのだ。
 
 数十時間の旅と南米特有の激しい接触プレーは、彼らの体力を奪った。すでに疲れはピークに達しており、限界を超えている。
 
 有り余る才能を持つMSNも、メンタルやコンディション次第では、凡庸なプレーヤーになり果てるということか……。そうなると、勝利は遠い。それを得られないことに選手はストレスを感じ、勝利という結果に囚われてしまうのだ。
 
 勝利は、心を麻痺させる。
 
「チャンピオンズ・リーグ・シンドローム」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
 
 中堅クラブが必死の頑張りでCL出場権を得、戦力を充実させてこれに挑む。そして、新鮮な気持ちで戦い、健闘を見せる。しかし、ビッグクラブを前に破れ去った後、ここで負った精神的消耗により、リーグ戦でも低迷し、2部リーグに降格してしまう――。

 欧州では過去に、多くのクラブがその憂き目に遭ってきた。
 
 その一方で、勝利に恵まれず、底を見ていたチームが一気に息を吹き返すような事例もある。例えば日本代表は、大会前に評価が低く、批判に晒されている時のほうが、明らかに成績が良い。
 
 これは選手が開き直り、反発心を高め、目の前の戦いに集中できるからだろう。結果に束縛されない、失うもののない強さということか。これは、不思議なロジックと言える。
 
 もっとも、ラキティッチが言うように、勝利が選手に与える効能も大きなものである。人を最大限に興奮状態にさせ、戦いに向かわせる。その精神状態は、大きな味方になるだろう。
 
 ただ、消耗を最小限にし、心身のバランスを保つことを欠かしてはならない。さもないと、思いもよらぬ転落が待ち構えている。
 
文:小宮 良之(スポーツライター)
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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