「ぐじぐじと言いながらも、やるべきことはやっていた」(土居)

長期離脱を余儀なくされた左足の怪我も癒え、今はサッカーができる喜びと幸せを強く実感。パフォーマンスも徐々に上がってきており、今季初ゴールも近いうちに生まれそうだ。(C)SOCCER DIGEST
開幕戦はベンチ外で、2節はメンバー入りも出場はなく、3節からは途中出場が続いている。ナビスコカップの1節・甲府戦では今季公式戦初先発も、シュート“ゼロ”で途中交代。続く神戸戦ではスタメンから外れた。
貴重な戦力であるのは間違いない。流れを変えられるだけの力は備えている。しかし、まだ絶対的な存在ではない。川崎戦ではそんな現状を打破するために、果敢にゴールを目指す姿からは鬼気迫るものを感じたが、しかし結果を求めながらも、土居の中で特別に焦りはないようだ。
「自分としては、一歩ずつ課題をクリアしていっているつもり。ナビスコの甲府戦では、なかなかシュートに持ち込めなかったけど、今日(川崎戦)はたくさんシュートを打てた。だから次は“決める”というところまで来ていると思う」
一歩ずつ――。着実な歩みに重きを置いているのは、昨年10月の左第二中足骨骨折という、全治3か月と診断された大怪我が影響している。
「オフも含めたら、半年間、サッカーができない状態だった。怪我を治して、練習して、というところから始まった。課題ではないけれど、自分の中の問題として、それをクリアしていった結果、今があると思う」
怪我はすぐには治らない。はやる気持ちを抑えて治療に専念し、辛抱強く単調なリハビリもこなしのだろう。嫌いな筋トレにも精を出した。不安に駆られ、1日を長く感じたかもしれないが、それでも確実に快方には向かっている――そうした経験があるからこそ、プレーができるようになってからも、一段一段と階段を上っていく感覚を噛み締めることができているのだろう。
精神的にもタフになった。
「怪我をして、良いことなんてひとつもないと思った。だけど、ぐじぐじと言いながらも、やるべきことはやっていた。それで治った時には、なんだろう……正直、なにも怖いものはなかった。こんなどん底の生活に比べたら、なにが起きても、小さいことだなって」
そして、サッカーができる喜びを改めて実感している。怪我の間は、クラブハウスにいても、チームメイトと同じようにプレーできないのが心底辛かった。踏み出せばすぐに越えられる目の前の白線の向こう側が、途方もなく遠くに感じられた。
「その白線を越えて、ピッチの中に入って、またサッカーができるのはすごく幸せなこと。だから一日一日、大事に練習したい。怪我は良くないことけど、気付かされることばかりで、そういう意味では良かったと思う。強くなれたかな、と」
怪我を乗り越えて、ひと回り逞しくなって戻ってきた。「もっと上げられる! もっといける! もっと重いのちょうだい! みたいな感じで(笑)」と、毛嫌いしていた筋トレにいかに取り組んでいたかを面白おかしく話すと、人気もまばらな、静まり返ったミックスゾーンに記者たちの笑いがこだました。
こうした試合後の報道陣とのやり取りも、土居にとっては“日常”の一部なのかもしれない。そこで交わされる会話の内容が、次こそはチームの勝利に貢献する自身の活躍ぶりになることを期待したい。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
貴重な戦力であるのは間違いない。流れを変えられるだけの力は備えている。しかし、まだ絶対的な存在ではない。川崎戦ではそんな現状を打破するために、果敢にゴールを目指す姿からは鬼気迫るものを感じたが、しかし結果を求めながらも、土居の中で特別に焦りはないようだ。
「自分としては、一歩ずつ課題をクリアしていっているつもり。ナビスコの甲府戦では、なかなかシュートに持ち込めなかったけど、今日(川崎戦)はたくさんシュートを打てた。だから次は“決める”というところまで来ていると思う」
一歩ずつ――。着実な歩みに重きを置いているのは、昨年10月の左第二中足骨骨折という、全治3か月と診断された大怪我が影響している。
「オフも含めたら、半年間、サッカーができない状態だった。怪我を治して、練習して、というところから始まった。課題ではないけれど、自分の中の問題として、それをクリアしていった結果、今があると思う」
怪我はすぐには治らない。はやる気持ちを抑えて治療に専念し、辛抱強く単調なリハビリもこなしのだろう。嫌いな筋トレにも精を出した。不安に駆られ、1日を長く感じたかもしれないが、それでも確実に快方には向かっている――そうした経験があるからこそ、プレーができるようになってからも、一段一段と階段を上っていく感覚を噛み締めることができているのだろう。
精神的にもタフになった。
「怪我をして、良いことなんてひとつもないと思った。だけど、ぐじぐじと言いながらも、やるべきことはやっていた。それで治った時には、なんだろう……正直、なにも怖いものはなかった。こんなどん底の生活に比べたら、なにが起きても、小さいことだなって」
そして、サッカーができる喜びを改めて実感している。怪我の間は、クラブハウスにいても、チームメイトと同じようにプレーできないのが心底辛かった。踏み出せばすぐに越えられる目の前の白線の向こう側が、途方もなく遠くに感じられた。
「その白線を越えて、ピッチの中に入って、またサッカーができるのはすごく幸せなこと。だから一日一日、大事に練習したい。怪我は良くないことけど、気付かされることばかりで、そういう意味では良かったと思う。強くなれたかな、と」
怪我を乗り越えて、ひと回り逞しくなって戻ってきた。「もっと上げられる! もっといける! もっと重いのちょうだい! みたいな感じで(笑)」と、毛嫌いしていた筋トレにいかに取り組んでいたかを面白おかしく話すと、人気もまばらな、静まり返ったミックスゾーンに記者たちの笑いがこだました。
こうした試合後の報道陣とのやり取りも、土居にとっては“日常”の一部なのかもしれない。そこで交わされる会話の内容が、次こそはチームの勝利に貢献する自身の活躍ぶりになることを期待したい。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)