• トップ
  • ニュース一覧
  • 「バルサにもマンUにも認めてもらえなかった」マルチネッリの才能は、いかにして育まれたのか。体格のハンデを乗り越えたアーセナルの主軸ウインガーのルーツ【ブラジル発】

「バルサにもマンUにも認めてもらえなかった」マルチネッリの才能は、いかにして育まれたのか。体格のハンデを乗り越えたアーセナルの主軸ウインガーのルーツ【ブラジル発】

カテゴリ:ワールド

沢田啓明

2024年02月29日

バルセロナから興味を示されてラ・マシアで生活

19年のサンパウロ州リーグで飛躍を遂げ、同年7月にアーセナルとの4年契約にサインした。 (C)Getty Images

画像を見る

 イトゥには、1947年に創設されたイトゥアーノという中堅クラブがある(現在はブラジル全国リーグ2部、サンパウロ州リーグ1部に所属)。90年代にサンパウロやイングランドのミドルスブラ、スペインのアトレティコ・マドリー、ブラジル代表などで活躍したMFジュニーニョ・パウリスタの出身クラブだ。
 
 気持ちを切り替えたマルチネッリは、そのイトゥアーノの入団テストを受けて合格。U -15チームで新たなキャリアをスタートさせた。
 
 当時、マンチェスター・ユナイテッドと提携していたイトゥアーノは、野心ある若者にとって魅力的なクラブだった。というのも、アカデミーに所属する優秀な選手は、チームの推薦を得られればマンチェスター・Uの練習に参加し、トライアウトを受けることができたからだ。マルチネッリは16年から17年にかけて、4度に渡りマンチェスター・UのU -18チームの練習に参加した。
 
「英語がまったく話せなかったけど、練習試合ではいつも地元の選手以上のプレーができた。絶対にプロ契約を勝ち取る意気込みだった」
 
 当時の気持ちをマルチネッリはそう振り返るが、結果的にマンチェスター・Uとの契約は勝ち取れなかった。その後、バルセロナから興味を示され、2週間ほどラ・マシア(バルセロナの育成組織の選手寮)に寝泊まりして練習に参加したものの、ここでも正式契約には至らなかった。
 
「技術的にはとても優れていたが、小柄で華奢だった。高いフィジカル能力が求められる欧州トップリーグで通用するのかどうか。その点を不安視されたのだろう」
 
 イトゥアーノでマルチネッリを指導したコーチの見解だ。いわば挫折を味わったマルチネッリは、その時の思いをこう告白している。
 
「ユナイテッドにもバルセロナにも認めてもらえず、大きなショックを受けた。自信も失いかけた。でも、イトゥアーノのコーチやチームメイト、そして家族から励まされて、何とか乗り越えることができた」
 
 イトゥアーノと念願のプロ契約を結んだのは17年11月、16歳5か月の時だった。18年3月にはサンパウロ州リーグでプロデビューを果たし、同年9月に若手の登竜門であるコパ・サンパウロ(U-20の大会)で初ゴールを記録。この18年シーズンはコパ・サンパウロも含め20試合に出場して計4ゴールを挙げた。
 
 ただ、当時はまだ途中出場が多く、アンダー世代のブラジル代表とも無縁だった。地元メディアから「イタリア国籍を持っているそうだが、将来、イタリア代表でプレーすることも視野に入れているのか」と訊かれたマルチネッリは、「夢はもちろんブラジル代表の一員としてワールドカップに出場することだけど、もしイタリア代表から招集されたら検討する」と答えている。
 
 迎えた19年シーズン、マルチネッリは大きな飛躍を遂げる。レギュラーとして臨んだサンパウロ州リーグでチーム最多の6ゴールを記録しただけでなく、大会の最優秀若手選手とベスト11に選出されたのだ。
 
 この活躍に素早く反応したのが、アーセナルだった。そして19年7月、移籍金710万ユーロ(約11億円)の4年契約でイングランドの名門にステップアップを果たしたのである。
 
 最初の2シーズンは左膝の怪我もあり出番は限定的だったが、才能の片鱗を随所に披露。そこから著しい成長を遂げて一気にレギュラーの地位まで上り詰めたマルチネッリは、東京五輪で金メダルを掴み、22年ワールドカップに出場するなどブラジル代表でも重要な戦力となっている。
 
 いくつかの挫折を乗り越え、名門アーセナルの未来を担ういまや中軸の一人となり、特大のスケール感を示しながら進化を続ける22歳に、小柄で華奢だった頃の面影はもはやない。
 
文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年11月16日号より転載

【記事】「レーダーに現れた」冨安所属のアーセナル、日本人アタッカーの獲得に96億円準備と現地報道!「欧州中のクラブが注目」

【記事】三笘薫が今季絶望――苦悩する“元バルサの天才”が声を上げた!「選手を守らなければ」
【関連記事】
「レーダーに現れた」冨安所属のアーセナル、日本人アタッカーの獲得に96億円準備と現地報道!「欧州中のクラブが注目」
「エンドウはプレーできない」12試合連続先発の“鉄人”遠藤航、FA杯でついにメンバー外に。クロップ監督が理由を説明
三笘薫が今季絶望――苦悩する“元バルサの天才”が声を上げた!「選手を守らなければ」
「プレミアで今季最高の新戦力」チェルシーの中盤を圧倒した“傑作”遠藤航への称賛止まず!「クロップ政権でベスト補強かもしれない」
「エンドウは好きじゃない」絶賛相次ぐ遠藤航を元イングランド代表MFがまさかの批判!その理由は?

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト いざアジア王者へ!
    5月10日発売
    悲願のACL初制覇へ
    横浜F・マリノス
    充実企画で
    強さの秘密を徹底解剖
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ