「自分は『このサッカーしかやらない』という監督ではなく、『目の前にいる選手の良さを引き出していこう』と考えるタイプだと思っています。チームの一体感や戦う姿勢を非常に大事にしていますし、ここ一番で力を発揮できるようなチームを目ざしています。

　昨季の戦い方から『守備的なサッカー』のイメージが強いかもしれませんが、守備で重視しているのは、いかに組織的にボールを奪うか、良い守りをするか。そのうえで、素早く攻めることをテーマにしていて、奪った後の速攻は特に大事にしています。

　ただ、サッカーには相手が自陣に下がった状況も想定されます。そうなると、自分たちが意図的にスピードを上げる状況を作り出さければいけない。今季は僕が横浜FCに来て３年目ですし、選手同士の関わりをどんどん出しながら、選択肢を持ってスピーディに攻めていくような形をより多く作れればいいと考えています」

　四方田監督はこういった理想のスタイルを思い描いている。それは、札幌時代にミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下で４年間、一緒に仕事をしたことで、より明確になったという。
 

「ミシャさんは２人目、３人目の関わりをどんどん出しながら、数多くの選択肢を持ってスピーディに崩していくというところにこだわる指導者。僕も、もともとそういうスタイルが好きでしたけど、ミシャさんとやったことで攻撃の崩しに関してはすごく整理されましたし、横浜FCでチーム作りをするうえでも活かしているところです。

　ミシャさんはメディアのみなさんの前ではニコニコしているイメージしかないかもしれないでしょうけど、喜怒哀楽がすごくて、怒る時はビックリするくらい怒鳴ります。選手が全力でやらなかったり、勇気のないプレーをしたりすると、特にそうですね。福森や中野も結構、怒られたんじゃないかな（笑）。

　それに『攻撃的に行く』と決めたら一切譲らない。札幌ドームで神戸相手に３－０から３－４にひっくり返された試合がありましたけど、『我々には７点くらい取るチャンスがあった。７－５で勝てた試合だ』と平然と言っていましたからね（笑）。

　僕自身はそんなミシャさんとは逆で、どうしてもバランスを取ろうとしてしまう人間なんですけど、そうやって大胆になることの重要性も頭に叩き込んでいるつもりです」

　偉大な先輩指導者であるミシャ監督から学んだことも活かしながら、横浜FCをJ１復帰させるのみならず、恒常的に最高峰リーグで戦える集団にすること。それが四方田監督に託される最重要タスクだ。

※第１回終了（全３回）

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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