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イングランド唯一のワールドクラスだった異端の才能【サイモン・クーパーの追悼文|中編】

カテゴリ:ワールド

サイモン・クーパー

2024年02月06日

ポルトガルとの準決勝で2得点の活躍

 ラムジーに与えられた最大の仕事は、チャールトンを進化させることだった。

 当時の他の代表チームなら、抜きん出た才能を持つタレントを中心に据えたチーム作りを進めたはずだ。そのスターの気ままなポジショニングも、守備にほとんど参加しない姿勢もすべて受け入れて――。

 だが、ラムジーは違った。彼はチャールトンに規律を植え付け、守備のタスクを与えた。互いの意見を戦わせることも少なくなかった。

「チャールトンがよりチームのためにチャンスを構築し、チームの勝利につなげるためにどうするべきか。われわれは何度も話し合った。だが、それがピッチの上で見られたのはせいぜい5分か、長くても10分程度だった。それを除けば、チャールトンはすべて忘れたかのように奔放だった」

 ラムジーの期待にチャールトンがついに応えたのは1966年大会直前だった。

 そしてチャールトンはポルトガルとの準決勝で2得点の活躍を見せた。おそらく彼にとってのキャリアの頂点だ。

 続くウェンブリーでの決勝には、修道女からもらったという“奇跡のメダル”を握りしめたシジーも駆け付けた。ボビーの後方にはもちろん、ジャックの姿がある。しかし、ボビーはこの西ドイツ戦でほとんど消えていた。

【後編】に続く

文●サイモン・クーパー
翻訳●豊福 晋

※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年12月21日号の記事を加筆・修正

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