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W杯に熱狂することは死にも関わる問題【サイモン・クーパーが綴る戦時下のフットボール|中編】

カテゴリ:ワールド

サイモン・クーパー

2023年12月09日

パレスチナの悲願はW杯出場だ

過激派組織ハマスの襲撃で、ハポエル・テルアビブを愛したファンのひとりも命を奪われた。(C)Getty Images

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 過激派組織による卑劣なテロ行為をきっかけに、何度となく繰り返されてきたイスラエルとパレスチナの武力衝突がふたたび激化している。

 もちろん、フットボールは止まったままだ。かの地にボールが転がる日は戻ってくるのだろうか。欧州を代表する著述家のサイモン・クーパーが、複雑で難解なテーマに切り込む。

【前編】命を奪われたひとりのフットボーラー
―――◆―――◆―――

 イスラエル人とパレスチナ人のフットボール熱は、4年ごとのワールドカップ(W杯)で頂点に達する。イスラエルがW杯本大会に出場したのは1970年のメキシコ大会のみだ。つまりそれ以外の大会で、彼らはどこか他の国を応援することになる。

 僕はイスラエルの大学講師エヤル・ジェルトマンに、イスラエルでもっとも人気のあるナショナルチームと、もっとも嫌われるナショナルチームはどこか訊ねたことがある。彼はこう答えた。

1位:ブラジル
2位:オランダ(ナチスのホロコーストの際、オランダ人がユダヤ人を助けた逸話が残っている)
最後から2番目:ドイツ
最下位:ドイツ

 今回を含め、ドイツはイスラエルにおけるいかなる紛争にも明確な支援を行なっているが、イスラエル人は永遠にドイツを許さない。彼らにとって、ドイツはいまも忌まわしいホロコーストと結びついている。
 
 おかしなことにブラジル代表への愛という点では、パレスチナ人とイスラエル人は分かり合えている。パレスチナが最も忌み嫌う国はアメリカとイングランド、親イスラエルを象徴する2か国である。

 しかし双方にとって、W杯に熱狂することは死にも関わる問題である。02年6月18日、日韓W杯中にも悲劇が起きた。その日、イスラエル人のあるバス運転手が息子と決勝トーナメントの試合を見るために仕事のシフトを変更した。絶対に試合開始に遅れたくないドライバーは予定時刻よりも早くバス停を出発。そこにパレスチナ人が乗車し、彼と18人の乗客を抹殺している。

 14年7月9日にはイスラエル軍がガザ地区の750箇所にミサイルを発射した。地球全体がW杯の準決勝に熱狂している隙に、ハマス戦闘員への「芝刈り」と呼ばれる定期的な攻撃を仕掛けたのである。

 ガザのビーチ沿いのカフェでは10人ちょっとの若者たちが、準決勝のアルゼンチン対オランダ(イスラエルのテレビ放送だった)を発電機に繋げた簡易テレビで観戦していた。そこにイスラエルのミサイルが着弾し9名が死亡。その中には兄弟や従兄弟もいたという。他にはガザのスタジアムも破壊された(イスラエル側は、同スタジアムがイスラエル市民へ向けたロケット攻撃の発射地点だったと主張している)。

 フットボールにおけるパレスチナの悲願はW杯出場だ。98年、パレスチナはFIFAにより国家ではない代表チームとして初めて認可を受けた。PFA(パレスチナサッカー協会)のトップは言った。

「われわれにとっては単なる試合以上の意味を持つ。これはパレスチナのスポーツとパレスチナの人々を開放するものだ」
 
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