前田のようなタイプが横浜で活きないわけがないのは、齋藤学を見ても容易に想像がつく。小柄な背番号11は、味方との連動したコンビネーションプレーをこなしながら、自慢のドリブルで局面を打開していく。前田が言うところの「使い分け」ができている代えの利かないアタッカーであり、前田にとって良きお手本でもある。
 
　右利きの齋藤は２列目の左サイドを主戦場にしており、縦に抜けてからのチャンスメイク、カットインからのシュートなど、そのハイスペックな攻撃性能はチームの得点力にダイレクトに関わってくるものだ。
 
　その齋藤と同等の活躍を見せる選手が逆サイドにもいれば――。１対１の攻防で持ち味を発揮するレフティの前田が果敢に仕掛けて好機を生み出す。加えて、カットインからの“右45度”は得意のシュートパターンだ。
 
　高い「個」の能力を備え、突破力に優れる“両翼”は、今季の横浜のストロングポイントになるかもしれない。
 
　かかる期待について聞けば、「なぜ期待されているのか分からないですけどね（笑）」と、ようやく笑みがこぼれた。しかし、すぐに表情を引き締める。
 
「今年は五輪の年で、そこも狙わなくちゃいけない。そのためには試合に出なければいけないし、そうやって結果につなげられれば……期待に応えられるかなと思っています」
 
　開幕戦を落とした悪い流れは、できるだけ早いタイミングで断ち切っておきたい。チームとしてもなにか変化が欲しいのか、２節のアウェー福岡戦では、開幕戦はベンチを温めた前田のスタメンが濃厚と見られている。
 
「シーズンを通して、コンスタントに出られれば」
 
　決して焦らず、徐々に戦力として貢献していく心づもりだった前田に、早くもチャンスが舞い込んできそうだ。連敗を阻止したいチームに今季初勝利をもたらす働きを示せれば、驕りや傲慢さを感じさせない、どこか好感の持てる“イケイケ感”も戻ってくるだろう。
 
取材・文：広島由寛（サッカーダイジェスト編集部）