ドイツ２部残留となった田中は２人と日々の環境が異なるため、どうしてもスピードや強度の部分で難しい側面もあるのだろうが、代表に来たら土俵は一緒。高いスタンダードのプレーをつねに示さなければいけない。そこは彼自身も再認識した点だろう。

「ボールの奪い方は人それぞれですけど、航君の奪う回数を作る量だったり、スピード感だったりはやっぱりすごいなと改めて感じました。そういうところは盗んでいかなければいけない」とボランチでコンビを組んだ先輩の落ち着きや冷静さ、駆け引きの巧みさを痛感したという。

　その基準を頭に叩き込んだうえで、トルコ戦に挑む必要がある。トルコは８日の欧州選手権2024予選のアルメニア戦で守備のミスからあっさり失点。後半に猛攻を見せて１－１に追いついている。今の欧州ではトップ国とは言えないものの、伝統的な粘り強さとタフさは失われていない。
 

　特にデュエルの回数が増える中盤では、相手のストロングが発揮されやすい。田中は遠藤のような球際やボール奪取を強みとしているタイプではないものの、そこで上回っていかなければチーム全体を落ち着かせられない。ボールを持った時の視野の広さや展開力、一瞬の隙をついて前に上がっていく力といった長所をより発揮するためにも、守備のベースの部分にこだわらなればいけない。そこは今一度、肝に命じるべきだ。

「自分は動き回ってゲームを作るタイプ。そういう意味では、ボールを触る回数を増やしたいし、動いてリズムを作ったり、出ていくシーンも出したいし、奪いに行く作業も大事になってきます。ポジションに囚われないって言うと語弊がありますけど、広範囲に動いてプレーする関与を増やしていくことが必要かなと思います」

　本人は自身の役割をこう評していたが、そういった特性をより出せる展開にできるかどうか。それが今回、田中の最大の注目点と言っていい。

　ドイツ戦に出た時は日本時間では25歳になっていただろうが、今回のトルコ戦が本当の意味での25歳初陣。これを内容ある勝利にできるか否かで彼のこの１年のキャリアは大きく違ってくるはず。近い将来、ステップアップを果たすためにも、１つ１つの試合で爪痕を残すことが肝要だ。

「１年１年、あっという間に来るんで、サッカー選手もそうですけど、人間としてもっともっと成長していけるような人生を歩みたい。サッカーもそうですし、年齢にとらわれずにいろんなものを挑戦し続けて頑張りたいなと思います」という25歳の抱負を胸に、田中は日本を勝利へと導けるか。そこに注目して重要なトルコ戦を見極めたい。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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