唯一の失点シーンは日本の連係ミスが招いたもの。守備対応のマズさを見せた左SBの伊藤洋輝はやや評価を下げざるを得ない。右SBの菅原由勢は持ち前の攻撃力で２得点に絡む活躍を見せたが、守備の安定感を考えたら、現時点では長友佑都や酒井宏樹のほうが上に感じる。伊藤も菅原も、３年後を見据えると、もっと守備でも安心感を見せてほしい。

　途中出場組はそれぞれ持ち味を発揮してくれたね。谷口彰悟はスムーズに３バックに入って空中戦の強さを発揮。久保、浅野拓磨、田中碧の３人は疲弊した相手のディフェンス陣に対して圧力をかけて、終盤に２ゴールを演出してトドメを刺した。

　特に久保は、レアル・ソシエダでの好調ぶりを考えれば、今後のスタメン起用も十分に考えられる。戦術上、森保監督は選手にフリーランニングを求める傾向があるけど、試合を決められる選手を起用するならば、トップ下は鎌田ではなく久保のほうが得策だろう。

　両チームを含めて突出したパフォーマンスを見せていたのは、アーセナル所属のセンターバック、冨安健洋だ。スピード、高さで欧州屈指のタレントたちを圧倒。ちょっと能力が違いすぎるよね。
 

　カタール・ワールドカップではドイツ相手にベタ引きで戦っていたけど、この日の日本はハイラインを保って戦えた。この戦術を可能にしたのは、背後のスペースを個人でカバーできる冨安が復帰したのが大きい。この日のMOMは間違いなく冨安だ。

　冨安とコンビを組んだ板倉滉も対人に強く、スピードでも負けなかった。ドイツのセンターバックとは対照的にラインコントロールが巧みで、機動力があった。彼がいれば、強豪国相手にも簡単には崩されないだろう。

　冨安と同様の安定感があったのは遠藤航だ。最終ラインの前でどっしりと構えていて、危険なところを常にケアしていた。プレミアリーグはとにかくプレースピードが速いから、リバプールに加入したことでパスが速くなって、テンポが上がったのが好印象だ。

　ブライトンで戦う三笘薫は、ゴールにこそ絡めなかったものの、彼がボールを持つと「ドリブル突破させまい」と常に相手選手が２～３人寄せてくる。ピッチに立っているだけで、対峙するディフェンダーに“怖さ”を与えていた。

　驚くべき成長速度と、別格の存在感...。プレミアリーグ組は本当に目を見張るものがある。そういう意味でドイツ戦は、イングランドの地で躍動する選手たちのレベルの違いが見えた試合だったとも言えるね。

【著者プロフィール】
本田泰人（ほんだ・やすと）／1969年６月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・１得点。J１通算328試合・４得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。

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