【高校サッカー選手権│東福岡・日本一の“真実”】すべての赤い彗星が輝いた

カテゴリ:高校・ユース・その他

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2016年01月12日

「『塩』をつつむ作業は大変だったけど、日本一になったので報われました」

マネージャーとしてチームを陰で支えてきた福里歩。表彰台ではトロフィーを掲げた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「ベンチに入れなかった多くの仲間のためにも負けられなかった」とキャプテンの中村。スタンドからは、終始チームを鼓舞する声援が飛んだ。写真:田中研治

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 男子校なので、ユニホームの管理などをするマネージャーは、選手の中から選ばれる。もちろん選手としてピッチに立ちたい。だが誰かがやらなければならないと、その役割を引き受けることを決意した。
 
 大会中、一番大変なのが清めの「塩」を作ることだった。試合開始とハーフタイムに、選手一人ひとりが身体に振りまく塩を、試合前日、一つずつ丁寧にサランラップにくるまなければいけない。何気に根気のいる作業だ。1日22個。計6試合。もうひとりのマネージャーと協力し、合計130個以上を作った。
 
 福里が階段を昇ってロイヤルボックスに行くと、ディフェンスリーダーの福地聡太から「ちょっと、こっちに来て」と言われて前に行くと、トロフィーを受け渡される大役を任された。
 
 そのトロフィーを掲げた時、様々な感情が込み上げて、涙が溢れ出た。
 
「『塩』をつつむ作業は大変だったけど、日本一になったので報われました」
 
 表彰式を終えた後、そう語った福里は“日本一の笑顔”を浮かべていた。
 
 東福岡はAチームからDチームまであり、県リーグにも参戦中だ。多くのスタッフを擁し、あらゆるレベルの選手が実戦経験を積める環境を整えてきた。それでもユニホームを着られない選手はいる。Bチームで満足する選手もいない。ただし森重潤也監督は「文武両道を掲げるなか、トップチームに入るのが難しくても、諦めずやっている選手ばかり。彼らからAチームの選手は刺激を受け、底上げがされてきた」と、チーム一丸で掴んだ優勝であることを強調した。
 
 応援するために、入部した選手などいない。歓喜の裏側で、一番悔しい想いをしていたのはスタンドの選手たちだったのかもしれない。しかし一方で、そのひとりでも欠けていれば日本一になれなかったというのも、また純然たる真実だ。
 
 実際、森重監督自身はジレンマを抱えていた胸の内を明かしていた。
 
「正直、このチームへの指導法はこれで合っているのだろうかと分からないまま来た。そんななかで、結果を残してくれた。選手たちは、本当に素晴らしかった」
 
 3年生の「監督を見返してやるぞ!」というミッションは成功した。ただし、「監督のことを胴上げしたら、感謝の気持ちしか浮かばなかった」と主将の中村は怒られた日々を意に介さなかった。
 
 全国屈指の名門校と呼ばれながら、再び日本一の頂点に再び立つのに17年の歳月を費やした。その間、星の数ほど無限に近い汗と涙が、選手権制覇という夢に向けて流されてきた。
 
 ピッチ上の選手、スタンドの応援団、マネージャー、そして東福岡にかかわるあらゆる人々――。
 
 2016年1月11日、すべての赤い彗星が輝いた。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト)
 
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